第884話

鼻歌を歌いながら歩いている陽気なラケッツさんを連れて、秘密基地までやってきた。


かっこいいって言われたのが余程嬉しかったのだろう。


うんうん。

君は今から魔道具の勇者になって、もっと賛美を浴びるから安心しておきなさい。


秘密基地の中にラケッツさんと入り、地下に降りていく。


すると地下から叫び声と言うか、奇声が聞こえてきた。


「ふおー!こ、これはもしかして‥‥なるほどこの魔力回路で‥‥ふおーっ!」


なんだこの奇声は‥?

危ない人でも飼ってたっけ?


「あ、そう言えばマルコイさん。先日獣人国からやってきた人を秘密基地に入れたんですけどよかったですか?一応獣人国の王様からの証書も持ってましたし、それにもマルコイさんのパーティメンバーだって書いてありましたけど‥」


あ、すっかり忘れてた。

確か賢者が先に来てたんだった。


「ああ。変な奴だけど、一応俺たちと一緒にいる勇者パーティの1人なんだ。」


「そうなんですね。この場所に案内してから、ずっと『ふおー!』って叫んでるので、あっち側の人だなとは思ってたんですよ。ずっとここから動かないので、食糧はここに運び入れさせてもらってます。」


あっち側ってどっち側だよ‥



そう言えば正人とあやめはセイルズに来てたけど、卓は神聖国にいたからラケッツさんと会ったのは初めてだったんだな。


「まあちょっとおかしな奴だけど、強力な魔道具を作るための知識を持ってるからな。卓がいると、ラケッツさんの狂化‥間違えた強化できるからな。」


「何と間違えたんですか!同じ言葉なのに、不穏な感じが拭いきれないんですけど!」


細かい事を気にするなラケッツさん。

どうせ後でわかる事なんだから。


地下の部屋に辿り着くと、危ない顔で魔道具に頬擦りしながら奇声を上げている卓がいた。


「ふおー!これも素晴らしい!魔力を込めると靴から風の魔力が‥ぐわっ!おろろろろ‥す、素晴らしい‥ふおー!」


「お、おい卓大丈夫か?頭から血が噴き出てるけど‥?」


卓が使ったのはブーツ型の魔道具だ。

魔力回路を取り付けて、そこから強風を噴射する事で空を飛ぶように駆けれないかなと思って作ったんだけど‥


威力が強過ぎて、足だけ先に進んで身体は回転しながら頭から落ちるという殺人魔道具になったんだよな‥


「へ?か、か、か、神降臨!ふおー!本物のマルコイ神の降臨だ!ふおー!」


やめろやめろ。

その神様の話題はもうお腹いっぱいだ。


「マルコイ神様!も、もしかして魔道具を作りに来られたんですか!?」


「ああ。正人やお前たちの装備と、その他の勇者の装備を作りに来たんだ。」


「ふおー!正に神降臨!まさかまた間近に神の所業を見る事が出来るとは!」


「いや、お前にも協力してもらおうと思ってるんだよ。その方がもっといい物が出来ると思うからな。」


「ふおー!この不肖、財前卓!マルコイ神のために粉骨砕身にてお手伝いさせていただきます!」


大丈夫だ卓。

お前には本当に粉骨してもらうと思うから‥


「すまないな。それじゃあさっそく素晴らしい魔道具の検討会をしようじゃないか!」


「ふおー!サーイエッサー!素晴らしい物を!とりあえずどうします?山が2、3個吹っ飛ぶような危険物を作り上げますか!」


危険物とは失礼だな。

まあ頑張ったら作れなくもないと思うけど‥


木偶爆弾を繋げるか?

いや、もっと根本的な所から考える必要があるな。


大きな容器に木偶爆弾を詰めまくれば、クラスター爆弾みたいになるよな‥


異世界の知識の中に核爆弾ってのもあるけど、これは多分作ったらいけない物だろう。


知識の中には爆発後の悲惨な模様が見られる。

やっぱり爆発は、その瞬間が美しいのであって、その後に影響を及ぼしてはいけないからな。


「とりあえず山を2、3個吹っ飛ばすのは後にして、装備を整えていくぞ。」


「装備ですか?」


「ああ。正人たちの武器を高ランクモンスターと戦える程度にしないといけない。魔王と戦うには必須だからな。あとはラケッツさんの装備だ。」


「え?自分の装備ですか?自分は勇者たちの装備を実験するんじゃないんですか?」


ふむ。

自分で実験と言うなんて、随分成長したなラケッツさん。


「もちろんそれもあるけど、魔王とはラケッツさんも戦ってもらおうと思ってさ。魔族に通用する武器も作れるようになったし、折角ならフル装備したラケッツさんに魔王軍に突っ込んでもらおうかと‥」


「はははは‥全くマルコイさんは冗談が好きなんですから‥‥‥‥冗談ですよね‥?」


「まずは、ラケッツさんが前回装備した『叩いたらドンと爆発鎧君』の改造から始めよう。」


「せめて何か言ってください!何当たり前みたいな感じで話進めてるんですか!」


「はい。頑張ってくださいラケッツさん。」


「ああ悲痛!」


涙を流しながら地面に崩れ落ちるラケッツさん。


大丈夫。

それでもラケッツさんは魔道具使ったら人格変わって活躍してくれますから!









----------------------------------------------------------------------

〇読んでくださった方へ

よろしければ、星をポチッとしていただけると、とても嬉しいです。

今後の執筆のモチベーションにもつながりますので、ぜひよろしくお願いします~!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る