第871話
う〜ん‥
もしかして正人が新しい魔道具をダンジョンから拾って来たとか?
「ああ!正人様申し訳ございません!」
まあ、そんな訳ないよな。
今日も今日とてベアトリスさんの必中バケツをその身に受け止めてるのか‥
お前スキル【不運】とか持ってないよな。
何か近寄るとうつりそうな気がするんだけど‥
「いいよ、ベアトリスちゃん!全然気にしてないってか、顔洗えてラッキーある意味ご褒美みたいな。」
いや、多分汚水だぞそれ。
どうした、俺がいない間にどっかで頭でも打ったのか?
「もう、正人様ったら。冗談がお上手なんだから。」
「ははは。冗談じゃないって。ベアトリスちゃんのバケツの水ならガロンで飲めるみたいな!」
おう。
飲んで腹壊せ。
しかし何だ?
何故お前たち2人の間にホワホワとした空気が流れているのだ?
ここはリル先生の刀で、そのホワホワを斬ってもらうべきか?
「マルコイお帰り。」
2階からあやめが降りて来た。
さっきからホワホワやってる2人を見ながら溜め息をついている。
「おい、あやめ。何か不穏な空気が流れているのだが、いったいどういう事だ?」
「どういう事じゃないわよ。あんた達がいない間もベアトリスさんは相変わらずドジっ子メイド全開だったんだけど、そのうち正人が癖になったみたいで‥」
く、癖になる?
癖になるもんなのかあれって?
「それで、何かさせるたびに『ご褒美ありがとうございます!』みたいな事を言い出して‥」
ふむ。
真性の変態だな。
「正人も正人よ!チャラいやつなのか、オタクなのかはっきりしてほしいわ!」
おい、問題はそこなのか‥?
ま、まあ仲が良いのはいい事だけど‥
「マルコイさん!俺頑張るっすわ!ベアトリスちゃんのご褒美のためにも絶対魔王倒すって決めたんすよ!」
そ、そんな理由で決心するなよ。
「そんで魔王倒して、この世界で生きていくっぽい感じっすわ!」
お前はそれでいいのか‥
まあ人の変態に文句を言うつもりはない。
男が決めたのであれば、他人がとやかく言うものではない。
理由がどうであれ‥
「そんな感じらしいから、あたし達も魔王を倒せるように力をつける事にするわ。本当はマルコイに任せてたら1人で全部解決してくれそうだけど、少しでも手伝えたらって思ってね。」
ありがとうございます。
でも本音を言うと、君たちだけで魔王を倒してもらおうとか思ってます。
「それならよかった。とりあえず問題もひと段落したから、魔王が大人しくしている間にお前たちに強くなってもらおうと思ってたからな。」
「そうなの?でも強くなるって神聖国にいる時にダンジョンに潜ったりはしてたけど、そんな感じでいいの?」
「ああ。ダンジョンに潜るのは、あやめたちのスキルを上げてもらうためだ。それと装備も魔王と戦えるレベルの物を揃えよう。」
「装備?でもそれを揃えるために、あたし達ダンジョンに潜ってたんだけど‥」
「確かに強い魔道具はダンジョンの深層に行けばあるかもしれない。だけど、今のお前たちだと辿り着く前に全滅するだろ。だから深層でも戦えるような装備を俺が作る事にする。」
ふひひひ‥
勇者で実験か‥
腕がなるぜ‥
あ、間違えた。
勇者たちが魔王とも戦えるような魔道具を作り出して、勇者に力をつけてもらい世界を救わなければ!
「何でそんな悪人顔してるのよ?」
あ、悪人顔とは失礼な奴だな!
ちょっと思った事が表情に出ただけじゃないか。
「という事で、しばらくは獣人国で活動する。正人たちはダンジョンに潜る前にアレカンドロたちと模擬戦して戦闘の基礎を叩き込んでもらえ。」
アレカンドロはそれを聞いて満面の笑みを浮かべた。
「自分に任せて下さい!どれくらいなら死なないか、ばっちり把握してますから!」
「死なない程度って‥」
心配するな、あやめ。
その辺の手加減はアレカンドロは得意だぞ。
リルは下手くそだから気をつけた方がいいぞ。
「ミミウは食べ物屋さん巡りするですぅ!」
「へ?食べ物屋さん巡り?あ、あたしもそっちがいいんだけど‥」
「馬鹿だな。ミミウの食べ物屋さん巡りは、獣人国の経済が大回転するから、とても大事な事なんだ。お前が考えている食べ物屋さん巡りとはまったくの別物だ。」
「そ、そうなんだ‥残念。」
「それじゃあ明日から行動に移すけど、今日は長旅で疲れてるから休む事にする。ベアトリスさん。」
「はい!何でしょうマルコイ様‥あっ!」
振り向いた拍子に持っていたモップのような物に足を引っ掛ける。
そのモップは何故か半回転して、ちゃんと拭き掃除をする部分が正人の顔面に命中する。
「おっふ!ありがとうベアトリスちゃん!」
「ああ!もう正人様ったら‥」
そ、それは一体どんな変態なんだい?
「ベアトリスさん。とりあえず冒険者ギルドに、明日の朝顔出すって伝えてもらってていいかい?そうしないとあの人乗り込んできそうだから。」
イザベラさんの顔をいきなり見るのは心臓に悪いからな。
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