第859話
えっと‥
俺の聞き間違いだよな‥
「すみません、少しぼーっとしてたみたいです。今何と言われました?」
「ん?そうかそうか。それではもう一回言うぞ。マルコイよ。この国の王様やってみない?」
あ、聞き間違いじゃなかった。
「え?あほなの?」
「おい、あほってどういう事だ?」
「あっ!すみません、心の声がだだ漏れになっておりました。何でそんな事を突然言いやがる‥間違えました。言われやがるんですか?」
「あんまり訂正になってない気がするんだが‥まあいい。知っての通り、私には子がおらん。本来であれば公爵家から王を出すことになるのだが、今回のヨエクの件がありほとんどの者が王になる事を辞退しよった。本来であれば侯爵家や王家の血筋のある者に王位継承権が移ることになるのだが‥」
それならそれでいいんじゃなか?
俺なんかよりよっぽどいいだろうし、王になりたいと野心のある奴もいるだろ。
まあそんな奴が賢王になれるかどうかはわからないけど。
「だがそれではこの国の行く末が心配なのだ。そこでこの国の英雄である貴公に王となってもらえないかと思ってな。」
「だから飛躍し過ぎてません?俺はただの冒険者ですよ。そんなどこの馬の骨かわからない者が王になって上手くいくはずがないじゃないですか‥」
「そうか?イェルンは賛成しておったぞ。これでタルタル神聖国に負けない国が作れるとか言っておったが‥」
アイツ‥マジデ‥ブットバス‥
「それにそれ以外の主要貴族達も、今日の貴公らを見て納得しておる。元々中立派であったアザウア伯爵も賛成して力になりたいとまで言っておった。」
アザウア伯爵‥
あ、あのアキーエにトラウマ植え付けられた人と一緒にいた人か。
「それに貴公のような馬の骨‥いやドラゴンの骨であれば、この国はもっと大きくなる。それに貴公がその気になれば全ての国を属国にする事もできるのではないか‥?」
そんな馬鹿な。
一介の冒険者にどこまで期待を‥
いや、めっちゃ真剣な顔してる‥
冗談‥じゃないの?
「どうだ?受けてはくれぬか?」
受けてはくれぬかって‥
「申し訳ございません。自分は今の暮らしが性に合っております。それに勇者と共に魔王を倒すという目的もありますゆえ。今この場に留まる事はできません。」
冗談じゃない。
この国の王なんて重積を背負うなんて俺には無理だ。
俺はみんなと楽しく生活して、鍛治やら魔道具作りやら好き勝手やって、ついでに魔王退治まで出来たらいいなとか思ってるんだよ。
「なーに、王の責務などイェルンに任せればいいのだ。貴公は王座に座って頷いていればよい。そして空いている時間で好きな事をやればいいではないか。」
どこのダメ王だよ‥
「もうそれならイェルンさんにやってもらえばいいじゃないですか‥」
「それはいかん。彼奴には華がない。優秀ではあるが、人がついてくるタイプではないからな。それにあいつ最近少し気持ち悪いからの。」
あ、それは王様も気づいてたのね。
イェルンさん、がっつりタルタル教にハマってるからなぁ‥
もう王様は宗教被害者と認定していいんじゃないだろか。
「タルタル風呂に入りたいけど、神の食べ物であるタルタルに身体を入れるのはどうなのか‥とか意味のわからん事で悩んどった。食べるのは美味しいし、素晴らしい調味料とは思うが彼奴は行き過ぎではないかと最近思っておる。」
王様はまだ毒されてないのか。
「王様、これ以上イェルンさんと深くつきあわないでください。特にタルタル関係は遠ざけるようお願いします。」
王様がこの国の最後の砦のような気がする‥
「それでどうだ?受けてくれる気になったか?」
「なりません。」
「何故だ?王様だぞ。国の長だぞ!」
「申し訳ありません。私には仲間と楽しく過ごせる時があればいいんです。それに私には獣人国に家もありますから。」
「ぬっ?獣人国に家だと?ここで王様になれば城が貴公の家になるのだが‥?」
お城のような家に住みたいなと思う事と実際お城に住むのは違います。
「う〜む‥‥ん?そうだ!マルコイよ。獣人国の家は買ったのか?」
「いえ、獣王様にいただきました。」
「であれば獣王殿はマルコイの知っておると言うことだな‥」
王様は何か考え始める。
「ふむ。いい事を思いついた!」
「それ絶対いい事じゃないから!考えを改めるべきです!」
よからぬ笑みを浮かべる王様。
「ふっふっふ。楽しみにしておくがよい。だがこの件は獣王殿とも話す必要があるからな。後日獣王殿と話した後に伝えよう。」
むう‥
絶対ろくでもない事を考えているに決まっている。
もうこの国は第二のタルタル宗教国家になった方がいいんじゃないだろうか‥
うっ、どちらにしても俺の胃に悪いのは変わらない気がする‥
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