第858話

お迎えの馬車は王家の馬車だけあり、揺れが少なく乗り心地が良かった。


異世界の知識にサスペンションがあるのだが、それに近いものを使っているのだろう。


馬車の中で少しウトウトしてしまい、その間にアキーエに髪の毛で遊ばれてしまい、整髪剤をつけたのか髪をかきあげた状態で固まっていた。


王城の前に着く。


「マルコイ様御一行であられますね。パーティーの準備はできております。そのまま会場にお入りください。」


城の前にいた門兵の人にすすめられて、城の中に入る。


門兵といえばイルケルさんはどうなったんだろうか‥


神のダンジョンで魔道具を盗んだ罪で、聖騎士の副隊長から神殿の門兵になってたけど、俺の魔道具実験の被験者‥げふんげふん‥お試しをしてもらったんだよな。


その後の事はよくわかってないけど、好転したんだろうか?


そのうち神聖国にも様子を見に行かないといけないとは思ってるんだけど、今はタルタル教の巣窟になってるからな‥


迂闊に入国すると大変な目にあいそうだから『影法師』を作って潜入してみるとしようかな。




そんな事を考えていると、会場に到着した。


扉の前で待つ様に言われたので待っていると、中から声が聞こえる。


「それではみなさま大変ながらくお待たせいたしました。救国の英雄である、冒険者マルコイ殿御一行の登場です。」


そんな声が聞こえたかと思ったら、目の前の扉が自動で開いた。


いや、よく見たら開戸の内側に人がいた。

扉を開けた後にさっと隠れたのか?


そんな変に凝った催しで開いた扉の中に入る。


「おー!あれが件の冒険者か!」

「まだ若いのに‥」

「うむ。確かに隙がないな‥」


様々な声が聞こえてくる。


前回モンスターの氾濫を撃退したときよりも注目されてます。


前回も国の危機だったと思うけど、今回は悪政を敷く王を倒して善王を救ったからな。


直接プリカを襲ったモンスターを撃退したよりも、街外の貴族にも大きな事だったんだろうか‥?


まあモンスターは俺たちで撃退したが、もしかしたら国の戦力で撃退できたと思ってたのかもしれないな。


「まるで貴族‥いや、王子様のようね‥」

「ほんと。なんて素敵な人なのかしら‥」


何やら貴族の女性方から褒められているようですな‥

もっと持ち上げてもいいんですよ。


「周りのパーティメンバーも美しい女性が多い。誰か我が領土に迎える事ができないだろうか‥?」

「あれだけ美しくて強いなど‥私の息子の相手にどうだろうか‥」


俺は声が聞こえた方に視線を向ける。


俺のパーティメンバーを引き抜こうなんて、いい度胸じゃないか‥


お前とお前だな!

顔は覚えたぞ!


「ひぃ!」


俺の顔を見て貴族たちが慌てて隠れる。


「こらマルコイ。だめでしょ、こんなおめでたい場所でそんな顔したら。誘われても誰1人抜けるメンバーなんていないんだから、どーんと構えてなさい。」


うっ‥


俺はみんなに助けてもらってるから抜けられたくない。

でも誘った奴の条件が魅力的な場合もある。

みんなの事を信じてるし、抜けるなんて思ってもいないけど、ずっとやりたかった事だったりすると引き留めるのも申し訳ない気がする。


そんな時は快く送りだ‥‥せぬ!


いや、そんな時が来たら送り出そう!

しかしそんな日がなるべく来ない様に、近寄る奴らは全部成敗してやる‥


「もう‥心配性なんだから。マルコイの側よりいいところなんてあるわけないでしょ。」


そうだといいんだけど‥


「おお!マルコイよ!よく来てくれた!」


会場の奥にいる王様が声をかけてきた。


あれ?

王様ってこんな時は最後に来るもんじゃないの?


俺たちが王様より後でいいんだろうか‥?


「ご無沙汰していました。今日はお招きありがとうごさいます。」


「ふむふむ。本当によかったぞマルコイ。今日来なかったら獣人国まで追いかけるところであったぞ。」


おっさん本気だったんかい。


てっきり王様が言った事をイェルンさんが誇張したのかと思ってたんだけど‥


「早馬で獣人国の獣王に訪問する旨を認めた手紙を準備してたのだが、必要なくなったようだな。」


どこまで準備してるんですか‥


「今は王様はとてもお忙しい身。俺たちのような冒険者に構う暇はないでしょう。」


「マルコイよ‥貴公がいなければ私はここにいなかったし、ここにいる貴族たちもどうなっていたかわからないのだぞ。それを救った貴公と祝わねば、この国は先に進めぬ。そう思わぬか?」


いや、別に思わないんですけど‥

無事に復興もしてるし、気分的な問題じゃないですかね‥?


「マルコイよ‥話は変わるが‥王様やってみない?」


はえ?











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