第856話
そういえば、よく考えれば2人ともお嬢様なのかな‥?
キリーエは豪商の娘だし、ミミウももしかしたらこの国の姫かもしれなかったんだもんな。
「ふふん。マルコイさん。うちに見惚れて鼻の下が伸びてるで。」
キリーエは確かに綺麗だ。
体型もスレンダーで、今日着ているドレスも装飾が少なく、身体のラインを強調していてキリーエにとても似合っている。
ただ惜しむべきはその草原だな‥
果てしない地平線が見えそうな、大草原である。
ふっと視線をキリーエの胸から上に向けると、何故かキリーエがプロミネンスを構えていた。
「キ、キリーエさん‥どうしたのかな?」
「いや、なんやマルコイさんが不快な事を思ってそうな気がしてやな。」
「そ、そんなわけないじゃないか。」
あ、あぶない‥
流石にその距離で撃たれたら頭破裂するし、魔法でもポーションでも治らない気がするんですけど‥
「自分も準備出来ました!」
その時アレカンドロとリルが扉を壊すくらいの勢いで入ってきた。
お城からお迎えの馬車が来るとの事だったので、今は泊まっている宿で着替えているのたが、それぞれ着替えては俺の部屋にやってくる。
何故だ‥?
あ、扉が傾いた‥
だがキリーエの追及を逃れる事が出来ると判断した俺は、すぐにアレカンドロとリルの元に向かった。
「あれ?アレカンドロはドレスじゃないのか?」
「はい!自分はスカートと言うのがどうも性に合わないのであります!足元に何も着けていないと言うのが心配になります!」
アレカンドロは燕尾服の様な服を着用していた。
綺麗な顔立ちをしているのでとても似合っている。
それに先程まで見ていた草原とは違い、聳え立つ双丘が凄い‥
「マルコイさん‥?」
うっ‥
プロミネンスの撃鉄を上げる音がした。
いや、実際は収音の魔力回路を取り付けているので音はしていない。
なんだろう‥
そんな気配がしたというか‥
「マルコイ‥うかつ‥」
リルさんや。
余計な事を言うんじゃないよ‥
そんなリルは黒いフリフリのたくさんついたドレスを着ていた。
少し幼い感じがするが、リルにとても似合っている。
異世界でも人気が出そうな服だな。
リルは自分が見られている事に気づいたのか、その場で一回転して見せた。
真っ黒な生地に白と銀の模様が入っているスカートがヒラヒラと舞う。
そして背中には真っ黒な鞘に納められた刀が背負われていた‥
‥‥‥いやいや、お前はどこに刀を持って行く気だ!
「リル‥刀は置いて行きなさい‥」
「かたなは侍のいのち‥かんたんには手ばなせない‥」
いや、お前侍じゃないから。
それに何故、侍を語るときだけ少し流暢になるんだ?
「お前王城であるパーティーだぞ。刀は俺かキリーエに預けとけ。」
「マルコイにあずけるとでばんなくなる‥キリーエ‥」
何の出番だよ‥
何かあったら刀を渡し忘れると思ってるのか‥?
まあ忘れると思うけど‥
キリーエがリルの刀を『ボックス』に入れる。
「さて、そろそろ馬車が来ると思うけど、皆んな準備はいいか?」
俺は皆んなに伝えながら窓の外を見る。
丁度馬車が到着したようで、装飾は控えめだが立派な馬車が2台宿の前に止まった。
ん〜、何か忘れているような気がするけど、思い出せないって事はそんなに大事な事じゃないのかな‥
その時、扉が勢いよく開いた。
「うおっ!」
び、びっくりした。
まだ他に誰かいたか?
蝶番の片方が外れて傾いている扉から1人の女性が出てきた。
むぅ‥
やはりこの扉は弁償だろうか‥?
だとしたら、とどめを刺したこいつの責任だと思うが‥
「じゃーん!マルコイさんお待たせしました!!恵登場です!可愛い格好をした恵に会いたかったでしょ!私も!きゃっ、恥ずかしい!」
すまんが、存在をまたしても忘れていたよ‥
あと本気で誰かこいつの頭のネジを探してくれませんかね?
恵は真っ白なAラインのドレスを着ており、スカートにはプリーツが幾つもあり恵の動きに合わせてひらひらと動きを見せている。
ドレスの動きは可愛いのだが、恵の動きはくねくねしてて気持ち悪い‥
本人は可愛いつもりなんだろうか‥
最初に会った時の知的と言う名前の印象を、丁寧に紙に包んで空に飛ばしたんだろう‥
「お前も行くのか?」
俺がそう声をかけると、恵は顎が外れるほど口を開ける。
こいつ本当はモンスターじゃないんだろうか‥
「うぐっ‥め、恵も頑張ったのに‥皆んなに忘れられて、1人置いていかれても頑張って探し出して、お手伝いしたのに‥」
そう言えばそうだった。
正直あの場面で恵がいなかったら負けないまでも、もっと苦戦してただろうからな。
「わかった、わかった。それじゃあ皆んなで行くとするか。」
「やったぁ!」
置いて行くと呪いでもかけられそうだったからな。
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