第855話
建物の復興やプリカ酒、後は何故か餃子のレクチャーで1月ほど費やした。
餃子は奥が深く、中に入れる具材で色々なメニューが出来た。
チーズを入れたチーズ餃子や、ドラゴンのミンチのみを入れたドラゴンミンチ餃子など多種にわたる商品となった。
ただ、イェルンがタルタルを餃子の中に入れるタルタル餃子たるものを発案したので、とりあえず圧力をかけて黙らせておいた。
しかしあの男の事だ、俺が獣人国に帰ったら作りそうな気がする。
いや、おそらく作るだろう‥
何とか阻止できないものか‥
餃子で街が盛り上がっているところに、特産品として準備していたプリカ酒も仕上がった。
本来はお米を作るところから始まるのだが、プリカ酒用の米は作り始めたばかりなのでもちろん間に合わない。
そのため今回のプリカ酒はホット商会が準備した米で作る事にしたそうだ。
プリカ原産のプリカ酒が出来上がるのは来年になりそうだ。
相変わらず魔法全開で工程を進めるので、本来数ヶ月かかる作業が1月ほどで終わっていた。
「結構口当たりが辛口だな。それに酒精度が高いみたいだな。」
「その辺は作る工程で色々変化するみたいやね。プリカのドワーフがみんなして作りたいって言ってるさかい、いろんな味のプリカ酒ができるんやないかな。」
さすがお酒大好きドワーフの皆様。
今までやってきた仕事を放り投げて、酒作りをしようとしている人が多数いるようだ。
街の経済が回るように、ほどほどにしてくださいね‥
倒壊していた建物の復興もほとんど終わっており、そろそろプリカを離れようかと話していると、王様から祝勝会のお誘いがあった。
王様も国を安定させるために、プリカ以外の街の貴族とやりとりしたりと毎日忙しそうにしていたので、落ち着いてから再度国を訪れようかと思っていたのだが‥
「このまま帰ったら、追いかけてくるからな。」
と温かいお言葉をイェルンさんが王様の代わりに持ってきたので大人しく誘いを受ける事にした。
ちなみにイェルンさんのドヤ顔が若干ムカついたので、背中からスキル【創造士】を使いタルタルソースを流し込んでやったのだが、「おお!神が舞い降りた!」など気持ち悪い事を言ってきたので、そのままお帰り願った。
「なあアキーエ。こんなにちゃんとした服を着ていかないといけないのか?」
俺は獣王様に謁見した時に来ていた服を『スペース』の中から引っ張り出して着用していた。
「当たり前でしょ!お城のパーティーなんだから、どこそこの貴族とかたくさん来るわ。みんな自分の国を救ってくれた英雄を見に来るんだから、きちんとした格好をしておかないと!それに今のプリカにはいないとは思うけど冒険者下に見る貴族もいるのよ‥マルコイが馬鹿にされるなんて嫌よ!」
う〜ん、俺は実際貴族じゃないんだから、そんなに気にしなくてもいいも思うんだけど‥
まあアキーエは俺の事を思って言ってくれてるんだから、大人しく従っておくとしよう。
そんなアキーエも今日はドレス姿だ。
赤に近いオレンジのドレスで背中がぱっくりと開いている。
‥‥‥‥ちょっと背中見せすぎじゃないか‥?
それに何故か草原に近い大地だったはずなのに、小山ができている。
外に出る時はプレートをつけていたり、普段着はゆったりとした服が多かったから気付かなかった。
だがげせぬ‥
大きくするために協力した覚えもな‥「えいっ!」
「ぐぼらっ!」
ゆ、指が!
ア、アキーエの指が目に‥!
め、目が‥目がぁ!
「もうマルコイったら!そんなに見られたら恥ずかしいじゃない!」
は、恥ずかしいからって人の目を潰すとは‥
お、恐ろしい奴だ‥
「い!いや、あまりに綺麗だったから見惚れたんだよ。」
俺はエンチャント:慈愛ある者を発動して眼を癒していく。
しかし危なかった。
もし草原の事を考えていた事に気づかれていたら、目だけでは済まなかったかもしれぬ‥
「もうマルコイったら!」
アキーエの指がまたしても的確に俺の眼を狙ってきた!
ぬがっ!
頭を全力で横に倒すことで、指を躱す。
なんですか君は!
いつから目潰し族になったんですか!
「もう!マルコイが恥ずかしい事言うから暑くなっちゃったわ。」
アキーエは手のひらをパタパタしながら顔に風を送っている。
あの細い指が突然凶器に変わるとは‥
女性は恐ろしい‥
しばらく待っていると、ミミウとキリーエがやってきた。
2人ともいつもの冒険者風の格好ではなく、パーティ用のドレスを身に纏っている。
ミミウは黄色でフリルがたくさんついているドレスだ。
ミミウらしくて可愛らしい。
キリーエは、アキーエと同じく自分の髪色である青を基調にしたドレスだった。
ただ、アキーエのようにプリンセスラインのようにふわふわしているのではなく、身体の線を強調するようなマーメイドラインのドレスだ。
2人ともいつもと雰囲気が違ってお嬢様みたいだな。
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