第845話
火柱が上がる。
鉄爆弾が俺とアキーエの魔法の威力をもう一段上のものに引き上げた。
炎に巻かれたヨエクはその場少しずつ前進しているが、その間も身体を焼かれていく。
身体から流れる血は炎で蒸発され、運良く地面までたどり着いたものも聖女の光で無力化されていく。
「ガガガががぁぁぁ‥」
ヨエクの動きが止まった。
膝下が炭化して崩れるように地面に倒れる。
炎はまだヨエクを焼き続けている‥
「そうか‥負けたのだな‥」
炎の中から声が聞こえる。
「意識が戻ったのか?」
俺はヨエクに尋ねる。
「ふん‥この炎のおかげで、俺の中に巣食うものが焼かれたようだ‥今は頭がすっきりとしている‥身体もすっきりしているがな‥」
ヨエクの身体はほぼ全身が炭化している。
ヨエクの持つ再生能力を超える高熱で焼かれたため、身体は再生せずに粉のようになって崩れていく。
「どこで間違ったのであろうな‥」
「ヨエクよ。お前は最初から間違っておったのだ。」
横を見ると、王様が鉄人形と一緒にこちらにやってきていた。
「最初から?」
「ああ。お主がルピナミが自分のせいで亡くなったと思った時からな。」
「あれは‥‥そうか‥そうなのかもしれませんな‥陛下から預けられた、私の命より大切なものをなくしてしまった時からなのでしょうな‥」
「あれはお主の責任ではなかったのだ。だがお主はそう思えなかった‥自身を責め立てて、苦悩して‥そして辿り着いた答えが、同じような人を出さぬよう自国を強くする事だったのであろう?」
「陛下は穏健派でしたからな。陛下に頼る事なく、将軍である自分が行う必要があると思いました。愚かだと今なら思えますが、以前はそうすることが正しいと盲信しておりました。」
「そうか‥道は違えたかもしれぬが、その思いは我が娘のルピナミに‥いや、我が国の王女ルピナミ・ミウリンドに届いているだろう。」
「そうだといいですが‥陛下‥ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした‥‥」
どこで間違えたんだろうな‥
自分で自国を強くしようと思った時から?
それともシエブラに弱っていた心につけ込まれてから?
それとも王女のルピナミ・ミウリンドを失ってから‥‥
はれ?
『「ミミウはですね、お父さんがミミウを拾った時に着ていた服に書いてあったって言ってたですぅ。服が血で汚れてたけど、そこだけ読めたって言ってたですぅ。」』
ちょ、待て。
ルピナミ・ミウリンド‥
やっぱりミミウじゃないか!
「おい、ミミウ。」
「ん?マルコイさんどうしたですか?」
「陛下‥‥イェルンに私が謝罪しておったと伝えてください‥‥‥陛下‥ありがとうございました‥‥‥」
ヨエクの身体に残された時間はもうないようだった。
「さらばだヨエクよ。我が国の将軍であった男よ。」
「ありがとうございます、陛下。おお‥‥ルピナミ姫が迎えに‥来てくれたよう‥‥です‥‥‥大きくなられて‥‥‥」
ヨエクの目にはミミウが写っている。
そのままヨエクは全身を灰にして崩れ落ちた‥
ヨエクは最後に姫に会えた事になるだろうか‥
最後の表情は満足したものだったな‥
しばらく王様はヨエクが灰となった場所に佇んでいた。
「マルコイよ、感謝する。最後にヨエクと話す事ができた。」
「いえ、最後に話す事ができたのはヨエクの‥ヨエク将軍の陛下や王女への思いが残っていたからでしょう。」
「そうだな‥‥さらばだヨエク。」
ヨエクは純粋過ぎた。
姫を亡くしたと思った事に耐えられなかったのだろう。
そこを魔族につけこまれたのだ。
それがなければ、もっと違う形で決着がついていたのかもしれない。
「さて、それでは城に行くとしよう。ヨエクは亡くなったが、まだ問題は残っておる。このままでは貴公達と約束した祝勝会も出来ぬであるからな。」
振り向いた王様の顔は暗くない。
これから王に戻るために様々な事をクリアしていかないといけないはずだが、王様の顔は明るく前を向いている。
「確かに。私たちはプリカの祝勝会に呼ばれて来たのでした。」
「そうであろう。少し時間はかかるかもしれないがな‥」
明るい表情のまま、王様は街の方に目を向ける。
王様の額に一筋の汗が流れる‥
俺は王様のそばに行き、同じ景色を眺める。
そこには明るい未来と‥‥‥瓦礫の山があった‥
ち、ちょっと壊し過ぎたかもしれない‥
「王様さえよければ、ホット商会が復興のサポートしますよって。」
「た、頼む‥」
「おおきに。国民の住居もそうやけど、お店の方もホット商会が張り切って復興させてもらいまっせ!」
うん。
プリカでもホット商会が絶対の地位を築きそうだな‥
雨降って、ホット商会固まるだな‥
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