第827話
クラーケンとオクトパスもかなり無くなった。
それ以上に俺の腕の感覚もなくなったけど‥
普通の魚も出したんだけど、ミミウさんのお気に入りは海洋モンスターでした。
普通のイカとタコより美味しいからな。
それはいいんだよ。
モンスター寿司が美味しかったのはいいんだ。
出したのは俺だし。
それよりも問題なのは‥
「マルコイさん!タルタル軍艦おかわりですぅ!」
そう。
これだよ、このタルタル軍艦さんですよ。
実はクラーケンとオクトパスより多く出たのが、このタルタル軍艦なるものでした。
おじさんが、握った米の上にボア肉を香草で炒めた物を乗せようとしていたので、海苔で巻くと乗せやすいですよとか言ったのが間違えだった‥
「あっ、そういった乗せ難い物は周りを海苔で囲ってやると乗せやすいですよ。」
「お?本当だ。こりゃ凄い、海苔で囲うことで海苔の味も楽しめるわけか。だったら海苔の風味を生かすような物を考えた方がいいだろうな。」
「ふぁー、凄いですぅ!これなら何でも乗せれるです!ミミウはタルタルが乗ったのが食べたいですぅ!」
「え?」
「タルタル乗せれないですか?」
「の、乗せれるに決まってるじゃないか!」
むぅ。
ミミウの悲しそうな顔は反則だ。
た、たかだかタルタルを乗せるだけだ。
そんな大事になるわけじゃないしな。
「ほう、兄さんこりゃないんだい?」
「これはタルタルソースと言って調味料になります。本来こうやってご飯に直接乗せて食べる物じゃないんですよ。あくまでも調味料ですから。だからもし寿司を出すことになっても、これは出さなくていいですから。」
「ふーん。新しい調味料か。俺も一つもらっていいかい?」
くっ‥
駄目とは言えない‥
俺はタルタル軍艦を差し出す。
おじさんがタルタルソースを受け入れない人でありますように‥
「な、なんだこりゃ!!」
あ、これ駄目なやつだ。
「こ、これが調味料?そんな馬鹿な。これはすでに完成している一つの料理じゃないか!卵も刻まれている野菜もそうだが、どれもお互いを邪魔せずに相乗効果で旨みを底上げしている!それに使う者の発想でいくらでも新しい物を作り出す事が出来るじゃないか!」
なんで皆んなそうかな‥
調味料ですよそれ。
美味しいけど、どれだけの人に感動を与える気ですか‥
「こ、これは凄い‥兄さん!もしよかったらこのタルタル軍艦だけでもいいから、店で出す事を許してくれないか?これはうちの‥いや、プリカの看板メニューになる!」
ならんならん。
なんでそうなるの‥
「わーい!いつでもここに来たらタルタル軍艦食べれるですか?」
「ああ!もちろんだ!ヨエク王が治める国で料理をするのは受け入れる事が出来ないと思っていた。だから国を出ようとしていた。だが間違っていた!俺が、俺たちが国を変えるべきなんだと。俺はこのタルタル軍艦でプリカを変えてみせる!」
タルタルソースで国を変えるって‥
何をどうしたらそんな発想になるのか教えて欲しいんだけど‥
「おっちゃん!安心しといてええよ。この国は元の住みやすい国に戻るさかい。このマルコイさんが‥タルタルの伝道師たるマルコイさんがプリカを救ってくれるよって。」
えぇ‥
キリーエさん何でそんな事言うの。
タルタルの伝道師って俺認めてないよ?
「そやから安心してタルタル軍艦だしたらええよ。それに米やタルタルなんかはうちが責任持って対応したる。おじさんはこの世界で1番美味しいタルタル軍艦を作ってくれたらええ!」
こうしてタルタル軍艦なるものが、プリカを代表するメニューとなった‥
多分イェルンさんとかもの凄く喜びそうだから、俺からは絶対言わないでおこうと思う‥
ここでもタルタル神殿とか出来たら嫌だなぁ‥
今のところタルタルソースと俺の関係性はバレていないけど、フーラさんが気づくのも時間の問題だよな‥
一刻も早く、ヨエクを倒して身を隠す事を考えなければいけなくなったようだな‥
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