第826話

「えっとですね‥実はこんな所に米があったりします。」


「がはははは‥‥‥は?」


いや、まあそうなるのはわかってました。


俺は『スペース』から袋に入った米を取り出す。


「兄さん今どっから‥いやそんな事より本物の米じゃないか!」


俺は米の入った袋をおじさんに渡す。


「この米でおじさんが考えていた料理を作ってもらえませんか?それと俺が知っている料理をおじさんに伝えるので、それも作ってもらっていいですか?」


「あ、ああもちろん。それは構わないが‥使ってもいいのかい?」


「はい。」


「わかった!ちょっと作ってみる。兄さんその知ってる料理を教えてもらってもいいかい。」


「ええ。」


俺は厨房に入り、米の炊き方、酢飯の作り方や寿司の握り方を伝える。


「ほう。こんな料理があるなんてな。兄さんはどこでこの料理を知ったんだ?」


「ちょっと遺跡にあった古文書のような物で知りました。」


そんな古文書なんてないけど。

ちなみに発掘場所は『アウローラ』の遺跡になる予定です。


「なるほどな。しかし生魚か‥焼かずに食べるなんて発想自体ないからな。」


ホット商会では海鮮丼なんて物を出してるけど、この辺は米自体まだ流通が少ないからな。


米を炊き、酢を入れる。

ちなみに酢もホット商会の調味料なので、『スペース』の中にたっぷり入っている。


「あと握り方なんですけど、あまりぎゅっと握らずに、口の中に入れたらほろりと崩れるくらいがいいみたいです。詳しい握り方は俺にもわからないので、その辺は工夫が必要です。」


「ふむふむ。握り方も上に乗せる物もいくらでも工夫や下処理で美味くなりそうだな。こいつは凄い!しかし兄さん、これを俺が作ってもいいのかい?」


「ええ。俺たちは冒険者ですから。料理屋をするつもりはありません。だからこの街に来た時にこの料理が食べれたら嬉しいかなと。」


「そうかそうか。だけど、この街だと米を買うにはかなりの料金がかかる。俺も商売だからな、利益が出ないのは出せない。この街だとかなり割高になるし、俺は街を移動しようと思ってるんだ。だから別の人に伝えた方がいいんじゃないのか?」


「いや、おじさんはこのままここで料理屋をする事になると思うから大丈夫。それにお米の件も解決するさ。」


だってキリーエさんの目がキラキラしてるから。

多分ここがホット商会加盟店第一号になる事だろう。


だってほら、ミミウの目もキラキラ‥ギラギラしてるから。


相変わらず涎すごいねミミウさん。


「う〜ん、何かよくわからんが‥まあ兄さんがいいならいいよ!とにかく今はお客さんを喜ばせないとな!」


そうです。

早くしないと、ミミウの涎でこの店が沈みますから。


「お待ちどうさん!とりあえずイカの寿司だ!」


おお!

すごく美味しそうだ!


ちゃんと食べやすいようにイカに切り込みが入れてある。


イカ自体そのまま生で食べる事はなかったから知らないはずだけど、歯切れや薄皮を切るためにしたみたいだ。


一目見てそれを行おうと思ったのは凄いな。


でも実はイカじゃなくてクラーケンなんですけどね!

それは見破れなかったみたいだな、ワハハハ。


「ありがとう、それじゃあいただく‥」「おかわりですぅ!」


はやっ!


「ほらよ!次はタコだ!」


「わーい!」


ふっ、それもタコじゃなくてオクトパ‥


「おかわりですぅ!」


や、やはりミミウはミミウか。


おじさんの腕が死ぬ前に俺も寿司を食べておかねば。


クラーケンの乗った寿司を口の中に入れる。


おお?


寿司のシャリは口の中で解けていく。


クラーケンも歯応えがあるが、切り込みを入れてる事で歯切れがいい。


程よい弾力で口の中にクラーケンの旨味が広がっていく。


こりゃ美味い。

簡単な料理に見えるのに、随分と奥が深そうだ。

異世界人の食に対する姿勢には本当に頭が下がる。


今からミミウの独壇場だから、あんまり食べれないからな。

しっかりと味わっておかなければ。


「おいおい、凄いなお嬢ちゃん。ちょ、ちょっと勢いが‥あっ!兄さん!兄さんも料理できるんだよな?ちょっとだけ手伝ってもらえないか?」


あ、やっぱり俺にも回ってくるんですね‥









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