第806話

ギルドの外に出て周りを確認する。


人気はないようだな。


あんなモンスター騒動があったから、周りの人たちは避難したみたいだ。


よしよし。


まあ人目についてもあまり気にしなくなってきたんだけど念のためね。


偵察に行くためには乗り物が必要になるよね。


なるべく早く偵察に行って、なるべく早く帰ってくるには速い乗り物が必要になるよね!


鉱石のインゴットやゴムなどの素材はまだ山のように『スペース』に入っている。


魔力は総量の4割ほどまで回復した。

これから戦闘になるかもしれない状況で魔力を大量消費するスキルを使うのは間違っているかもしれない‥


でもね‥


漢のロマンが俺を掻き立てるんですよ。


搭乗型の鉄人形を作って乗るって方法も考えたが、速さを重視するなら別の物がいい。


羽根人形を背中に背負った大きなVの字を胸につけた鉄人形の頭に乗る方法も考えた。


しかしおそらくあれ程の大きさの鉄人形になると、魔力を全部使い切ったとしても1ヶ月ほどかかりそうなので諦めた。


そこで今回は俺が異世界の道具で乗ってみたい物を作る事にした。



広い場所で手のひらを下に向け、スキルを使う。


「『創造:自動二輪車』」


ぐおっ!


やばい、想像以上に魔力が吸い取られる。


何とか全ての魔力を使う前に、手のひらの先に光の粒子が現れた。


よかった。

本当は物凄く大きくてカッコいい奴を創造しようと思ったけど、魔力量を考えて小回りの効くものにしたのが正解だった。


魔力が切れかかり目の奥がチカチカして、身体がふらつく。


だがそんなものをぶっ飛ばすほど美しい姿をした自動二輪車が俺の目の前にあった‥

規則正しい凹凸があるゴム製のタイヤが前後にあり、それを動かすための動力が機体の真ん中辺りについている。

そしてその少し後ろには人が乗れるようにシートが設置されている。


完璧だ‥



動力は異世界のように化石燃料はないため、魔力を使う事で動くようにしている。

本来は吸気工程から排気工程までの4つの工程を化石燃料を使い混合気を圧縮したり燃焼させたりするのだが、燃料自体がないので使用する事ができない。


だが諦めることはできなかったので、エンジン部分はそれっぽく作って後は魔力回路にお任せする事にした。


もしかしてエンジンまで正確に作っていたら魔力切れ起こしてたかもしれないな。


この自動二輪の仕組みは簡単だ。


本来空気と化石燃料の混合気を圧縮して、そこに火花点火し混合気を燃やし、その燃焼エネルギーを動力として取り出すという作業を、鉄の箱の中で魔力を爆発させて動力にするというお手軽な形にしたのだ。


自動二輪車はアキーエさんのおかげでボロボロになっている街道を走らせるので、オフロード仕様にしている。


魔力自体もそこまで必要としないので、無理をしなければ今の状態でも扱えるだろ。


それにこの程度なら使用する魔力より自然回復する魔力の方が多いので、乗っていても回復するしな。


まあ俺にとってはたいした事ない魔力量だが、普通の人が使うとすぐに魔力切れになると思うけど。



俺は自動二輪車に跨る。


そうそうこれだよ。


これが俺が【異世界の知識】で得た知識の中で、巨大ゴーレムの次に作りたかった魔道具なのだよ!


俺はハンドルを握り魔力を自動二輪車に流し込む。


まるで自動二輪が何かを威嚇するような音を立て車体が震える。


「いいぞ!動作は良好だ!後は動力がタイヤに伝われば動くはずだ。上手く動いてくれよ‥」


ハンドルのアクセルを捻る。


エンジンを模した箇所で爆発していたエネルギーが一気に後のタイヤに注がれる。


後輪のタイヤがエネルギーを受け止め、その力を解放する。


解放された力は鋼の車体に俺を乗せたまま、強い推進力を発揮して前に進む。


そして前輪のタイヤはまるで解放されたかのように軽くなり、段々とその重いタイヤを宙に掲げる。


「ちょっ!待て!なんだそりゃ!」


自動二輪車は前輪を宙に浮かせ、後輪だけで爆走する。


「のほー!」


「なんだ!どうした!?」


ギルドからルパートさんが出てきたがそれどころではなかった‥


「なんだありゃ‥?」


ルパートさんのそんな呟きも俺の耳には届かなかった‥






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