第790話

アレカンドロの攻撃で魔法の氷が中の肉塊ごと割れ、アキーエの魔法が散り散りになった肉塊を焼き尽くす。


細かく砕かれた後も、氷から抜け出した肉片は本体と思われる肉に戻ろうとしていた。


まあ、アレカンドロの攻撃で粉々になったから、どれが本体かわからなくなってたけどね。


その細かくなった肉塊をアキーエの魔法が炭化するまで焼いた。


おそらくここまですれば復活することはないだろう。


しばらく様子を見ていたが、動く物はないようだ。


しかし‥


なんだったんだアレは?


冒険者ギルドの面々や、王様たちも知っている感じはしない。


ヨエクの新しい戦力か?

しかしアレはあるだけで街を滅ぼしそうだぞ‥


氷龍を単体で倒せるアレカンドロが1人では倒せなかったのだ。


アレカンドロは今はSランク相当の力はあるはず。

そのアレカンドロが1人で倒せないのであれば、あれが何匹もいたら国が滅びるぞ。


それに‥


あれが完成形なのだろうか‥?


意志のない魔物。

あれが意思を持っていたら‥


ヨエクをぶっ飛ばしたら終わると思っていたけど、そう簡単にはいきそうにないみたいだな‥






「お疲れマルコイ。」


「ああ。アキーエもありがとう。」


「それにしても、アレはいったいなんだったの?」


アキーエが炭化した肉塊を見ながら尋ねてくる。


「そうだな、正直俺にもわからん。おそらくだが、ギルドに来た衛兵隊長の成れの果てだと思う。しかし何故あんな姿になったのかはわからないけどな。」


「えっ!あれって人だったの!?」


「たぶんな、たぶん。あの肉塊の中央に、人の顔らしきものがあったんだ。それがあの衛兵隊長に似てたってだけ。それにあいつらがいた場所に急に現れたんだ、何らかの関係性はあるだろ。」


「それじゃなに?人がモンスターに変わったってわけ?あれがモンスターなのかわからないけど‥」


「そうだな。衛兵隊長は本気で命乞いしてたからな。自分がモンスターになるなんて思ってもいなかったと思うぞ。まあ十中八九ヨエクが何かしら仕込んだんだろうけどな。」


銃を作成するだけではなく、人体実験まで着手してたわけか。

しかしヨエク1人で出来ることじゃない気がするけどな‥


誰か協力者がいるんじゃないだろうか‥?

ヨエク兵も気付いてないのであれば、今後もモンスターに変わるような奴がいるのかもしれないな‥


「酷い事するわね‥相手の事を何とも思ってないんでしょうね‥実験と言っても、マルコイがやってる事とは全く違うわ‥」


そうだな‥

俺の実験は、ちゃんと相手の事を考えて死なない程度にしているし、元に戻れないような事をする気はない。


そこはヨエク何かと一緒にしてほしくないな。


しかしそれよりも俺の新しい魔道具の確認作業を、アキーエが人体実験と思っていた事の方がショックがでかいんですけど。


俺たちが話しているとルパートさんが駆け寄ってきた。


「すまない!冒険者ギルドを守ってくれてありがとう、感謝する。」


「いや、構わないさ。王様からの依頼だったからな。」


「そう言ってくれると助かる。しかしさっきのアレはいったい何なんだ?」


やはりルパートさんも知らないか‥


「ルパートさん、王様にも話を聞きたいので一緒にいいですか?」


俺はルパートさんを連れて、王様とイェルンさんの所に向かう。


「マルコイ。大義であった。」


「ありがとうございます。王様、イェルンさん。ところで先程の肉塊ですが、心当たりはありますか?」


「いや、私はないな‥あんなおぞましいもの初めて見たぞ‥」


「私もありません。」


やはりそうか‥


国のトップである王様と宰相が知らないのであれば、ヨエクが鉱山よりももっと秘密裏にしていたものだろう。


「アレが何かはわかりません。ですが恐ろしく強く、限りなく不死に近いものです。俺が作った鉄人形たちはAランク程度のモンスターであれば、撲殺出来ます。それをまるで紙のように薙ぎ倒していました。並の冒険者であれば瞬殺されるでしょう。」


「それほどか!?」


一同が驚きの声を上げる。


それもそのはずだ。

Sランク相当のモンスターが突然現れた事になるのだから‥







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