第788話

「なんだあれは?」


「ウギィィィィィィィィ!」


紫がかった肉塊は奇声をあげながら、鞭のような物を振り回している。


まるで腐りかけの肉塊で、ところどころ溶けかかっている場所もある。


振り回しているものは肉塊と同じ色をしており、血管のように脈打っている。


肉塊の中央に人の顔のようなものが見える。

片目は潰れており、かろうじて片目と鼻が見える程度だ。

口もあるようだが、大きく裂けていて目と鼻とのバランスがとれていない。


片目と鼻しか残っていないが、見覚えのある顔だ。


先程までヨエク兵を率いていた、衛兵隊長だろう。


何が起こったのか全くわからない。


衛兵隊長がこの怪物に変わったのか?


鉄人形たちは飛ばされても立ち向かっているが、腕が千切れたり大きく凹んでいるようだ。


動けなくなった個体もいる。


「マルコイ‥何あれ?あれは生き物なの?」


「さあな‥?だがこちらに敵意を持ってるみたいだな。さてどうするか‥」


鉄人形が相手にならないのだ。

油断出来る相手ではない。


それに‥


むちゃんこ気持ち悪い‥


だって煙とかシューシュー言ってるぞあれ。


「はーはっはっは!とぅっ!」


誰かが笑い声と共に空に飛び上がった。

まあ声でわかってるんだけど‥


「ようやく自分の出番のようですな!装着!『聖鎧闘士』!」


アレカンドロがスキルを使い鎧を装着する。


そして翼を使い空を駆け、肉塊のところへ向かう。


「わっはっは!行くぞ!必殺『天地爆発拳落とし斬』!」


アレカンドロは手の中に風を纏った大斧を出現させる。


その大斧を大きく振りかぶって、上空から肉塊に向かって一直線に突っ込んで大斧を振り下ろした。


う〜ん‥

ネーミングセンスがね。

拳と斬両方は入ってるじゃないか。


そうだな‥

俺なら‥『天地ひっくり返し大斧斬』とかにするかな。

今度アレカンドロに教えてやろう。


アレカンドロの大斧を喰らい、盛大に血飛沫をあげる肉塊。


肉塊の血飛沫は、地面に触れると煙をあげた。


なっ!?


血がかかり煙が出ているところが溶けている?


あの血を浴びては不味い!


「アレカンドロ!その血を‥」


慌ててアレカンドロに声をかけようとしたが、アレカンドロは大斧を振り回して周りにある肉塊に攻撃を続けていた。


そしてよく見ると、アレカンドロは全く血で汚れていない。


肉塊を斬るたびに血が飛び出しているが、アレカンドロにかかる寸前で弾かれている。


そうか、風を纏ってるからか。


よかった、アレカンドロが暴走して突っ込んだけど、結果的には相性がよかったみたいだ。


あれが他のメンバーだったらと思うと冷や汗がでる。


いや、他のメンバーだったら、あんな戦い方しないけどね。


触手のような物がアレカンドロを襲うが、アレカンドロは意に介さず本体と思わしき肉塊を攻撃する。


触手はかなり威力があると思うのだが、避けもせず本体のみを狙っている。


風の障壁とスキルの鎧があるとはいえ、ダメージは受けているはずだぞ。


これは加勢した方がいいよう‥


「はーっはっはっは!やはり戦いはこうでなくてはっ!どんどんかかってくるがいいですぞ!」


あ‥えっと‥


楽しんでらっしゃるようですね‥


も、もう少し様子を見るとしよう。




しかしあれは何なんだ?


考えられるのは、突然あの場にモンスターが現れた。

転移のトラップや、ヨエク兵がモンスターを転移させるような魔道具を持っていて、何かをきっかけに発動した。


もしくはヨエク兵の誰かが、あれに変貌したってところか‥


前者はそれほど強力な魔道具をあんな奴らが持っているか?

ヨエクが強力な魔道具をいくつも持っているのであれば可能性として考えられるが、そういった形跡は今の所はない。


ならば、人がアレになったと考えるのが妥当なんだろう。


しかし何故あんな物に変貌したんだ?


多分変貌した衛兵隊長も知らなかったんじゃないだろうか‥?


考えても答えが見つからない。


ヨエクに聞くことがもう一つ増えたな‥







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