第772話

気持ちが恐ろしいほど昂った。


ホット商会が軌道にのった時も昂ったけど、それとは違うものだった。


これがあればマルコイたちが立ち向かってる相手とも戦える。


そう考えただけで身震いがした。


ひと目見た瞬間に名前を決めた。


『プロミネンス』


マルコイの絶望的なネーミングセンスは置いておいて、銀色に輝くオリハルコンで出来た銃。


そこから放たれる太陽のような銃弾。


これがあれば自分も戦える。

そう思える物だった。


実際王様を救助する時に使用したが、自分が思っていた物よりも遥かに強力な魔道具だった。


弾がミスリルで出来ていて、無駄撃ちしたら駄目だとわかっているのに思わず我先にとモンスターを倒してしまった。


リルとアレカンドロに狡いみたいな顔をされたけど‥


2人もだけど、みんなが自然と自分が強いモンスターを倒している事を当たり前と思ってくれている事が嬉しかった。


そしてこの武器を使うのに問題だったミスリルの事も解決した。


ミミウが精霊を使って大量のミスリルを見つけてくれたのだ。


本当はヨエクの物なのだけど、王様ももらっていいと言う事だったので、遠慮なくマルコイさんが収納してくれた。


これからも自分はこのパーティと共にいれる。

マルコイの側に一緒にいれると思うと心の底から嬉しかった。


この気持ちが何になるのかわかってはいるけど、今は必要ない。


みんなと一緒にいる事が大事なんだから。


キリーエは自分の中にある温かい物を奥底に仕舞い階段を駆け上がった‥







ギルドマスターの部屋につき、扉を開ける。


中にはギルドマスターが座っていた。


キリーエは存在感を少しだけ戻す。


するとギルドマスターがその事に気づいてこちらを見る。


そしてすぐに首を横に振る。


「どうした?何をしている?ん?そこに誰かいるようだな‥誰だ!」


部屋にいたもう1人の男が声を上げる。


「別に誰でもええやん。こそこそと部屋の隅に隠れとったやつに教える気なんてあらへんしな。」


「な、なんだとっ!おのれ!姿を表せ!」


キリーエはギルドマスターの部屋に入る前に、もう1人誰かいる事に気づいていた。


少し様子を伺っていたが、その人物が一時的にギルドマスターの部屋にいるわけではなく、部屋に待機している事がわかったためそのまま中に入った。


男は隠密している間は気づかなかったが、少し存在感を戻した時に気づいた。


おそらくギルドマスターと同じくらいの技量の持ち主と思う。


油断できる相手ではない‥


「くそっ!」


男は懐から銃を取り出し、辺りを警戒する。


「少しでも動けば身体に風穴あけてやる!この銃はヨエク様から直接いただいた最新式の銃だ。今までお前が見てきた他の衛兵が持っている銃とは威力も連射性も一線を画す!お前たちのような奴らが一生かかってもお目にかかる事ができないような魔道具だ!この銃で死ねる事を光栄に思え!」



「はは。あほくさ。どれを最新式言うとんねん。そんな不恰好でぶっさいくな銃誰も見とうないわ!」


男が持っている銃は他の衛兵が持っていた銃の2倍はありそうなもので、弾倉と撃鉄が4つもついている。

銃口も大きく部品全てが大きい。


銃身もグリップも黒く不恰好で見た目が悪い。


キリーエはそんな物を自慢気に話出す男に腹が立った。


「な、なんだと貴様!ふん!まあいい。そこまでの隠密だ。少しでも動けば場所が割れるから部屋の隅で震えながら強がりを言っているだけだろうが!場所がわかれば、全ての銃弾を貴様に撃ち込んでやるからな!貴様も!貴様の仲間も皆殺しだっ!」


キリーエは悠然と歩いて男の真横に来る。


そして男が構えている銃に対してプロミネンスの照準を定める。


男の腕が突然弾かれるように動いた。

その勢いは男の膂力で止めれず、さらに関節可動域さえも容易に超える。


結果男の腕はあらぬ方向に曲がった。


「ギィッギィギャーーーーっ!」


男は腕を抱えたままその場に蹲る。


男は自分の手を見ると、それまで持っていたはずの銃はなくなり、自分の指も銃の暴発で半分以上はなくなっていた。


「残念やったな。もう撃ち込む銃も指も無くなってしもたみたいやね。」











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