第768話

「さてそれじゃあ外に出るとしよう。」


俺はみんなにそう伝える。


「ところでマルコイ、外にはどうやって出るの?見つからずに出るのは難しくない?」


あ、そう言えば外に出る時の事考えてなかったな‥


「とりあえずコソッと出てみるか?」


「いやいや、またマルコイさんが階段作って上から出たらいいんと違う?」


「でも外が明るくなってたら難しいんじゃない?」


確かに。

入る時は暗かったから目立たなかったが、今はあれからかなり時間が経っている。


もし外が明るくなっていたら、階段作って出るのも厳しいのかもしれないな‥


「だったら俺たちが表から普通に出て衛兵の気を引くので、その時に出てください。」


「カルロさん、いいんですか?」


カルロさんは浅くない傷をいくつか負っていたが、キリーエの渡したポーションで負傷した身体を癒していた。


「ああ。俺たちは鉱山の探鉱者に紛れて入ってきたんだ。もちろん王様も一緒にな。探鉱者と一緒に戻ってないから死んだものとされていると思うが、大丈夫だろ。それにマルコイさんたちの手柄をもらう事になるけど、ヘルハウンドを倒したとなれば騒ぎにはなるはずだ。」


ヘルハウンド‥?

あ、リルが俺ごと斬ろうとしたやつか。


「あいつがこの鉱山にいたから、ここの発掘が遅々として進まなかったんだ。何度か冒険者を送り込んだけど、失敗したからな。それが討伐されたってわかったら騒ぎになるに決まっている。ヨエクなんかは、ここぞとばかりに探鉱者を送り込むはずだ。」


そして入ってみたら鉱石は根こそぎ無くなっていると‥

ヨエクの絶望した顔が見れないのは残念だが、想像しただけで楽しくなるな。


何かその瞬間を残せるような魔道具でも作ろうかな‥


「それじゃあカルロさんたちに先に出てもらって、その隙に階段で外に出ることにしよう。あまり遅くなってしまうと調査が入るかもしれないからな。すぐに行動しよう。」


俺たちは急いで鉱山の入り口まで移動する。


カルロさんはここで別れて、パレラさんと2人で鉱山を囲むように立っている建物の入り口に歩いて行く。


そして入り口にいる衛兵を見つけて声をかける。


「すまない。」


「なっ!なんだ貴様はっ!今鉱山に入っているやつはいなはずだ!どこから入った!?」


「違うぞ。俺たちは随分前に探鉱者の護衛として鉱山に入ったんだ。それで中ではぐれて‥」


「何故直ぐに出てこなかった?それに中で長期間生きられるはずがない‥貴様ら何者だ!?」


「俺たちだってすぐに戻りたかったさ!だがヘルハウンドに狙われて戻れなかったんだ!食糧は彼女が【ボックス】を持っているから何とかなったが、ヘルハウンドに狙われてたから死に物狂いで生き延びたんだよ!」


すると衛兵の顔が疑惑から驚きの表情に変わる。


「なるほど。そりゃ災難だったな。それじゃあヘルハウンドから逃れて上がってきたのか?」


「いや、どう足掻いても逃げれそうになかったからな。時間をかけて取り巻きのレッサーウルフを減らして、ヘルハウンドを討伐して戻ってきた。」


「なにっ!あのヘルハウンドを討伐したのか!?」


「ああ。レッサーウルフに1人、ヘルハウンドと戦った時に1人仲間が犠牲になったがな。これが討伐証明だ。」


カルロさんはヘルハウンドの牙を取り出して衛兵に見せる。


そう言えば、リルが倒した後にカルロさんがヘルハウンドから何かむしってたな‥

硬いから切れないとか言ってた奴を、リルがズバッと斬ってたような気がする。


「おお!このサイズは確かにヘルハウンドだ。死んだ仲間には申し訳ないが、大金星だ。すぐにヨエク様に伝えてこよう。」


「何事だ?」


そこに数名の男が近寄ってきた。


「あっ!ダリック様!」


ん?

誰だ?


「ダリック様‥?ヨエク様の側近の?」


「ふん。今はヨエク王が治めるトールルズ国の宰相だ。以後気をつけろ。」


何かまた偉そうな奴が来たな‥












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