第734話
新しく作った魔道具やら何やらを『スペース』に入れて馬車に乗りプリカに向かった。
誰かに魔道具を渡していたらその魔力を伝って転移出来たのだが、残念ながらプリカには俺の魔道具を置いていない。
羽根人形を使って急ぎたいが、あくまでもギルドからの依頼でプリカに入るのだから羽根人形のような移動手段は取らないで欲しいとイザベラさんに言われてしまった。
プリカに入ってしまえばこっちのものだが、入るまでは形式に乗っておかなければならない。
それに俺がプリカでヨエクをぶっ飛ばしてしまったら、現段階ではトールルズの王を冒険者が殴った事になってしまう。
そうなると獣王様にも迷惑をかけるだろう。
だが、プリカで王様を発見できたらヨエクは内乱を起こした犯罪者となる。
遠慮なく地の果てまでぶっ飛ばせるというものだ。
俺は馬車の中で仲間を見渡す。
「すまないみんな。確かにイザベラさんが言う通り、俺たち冒険者はこんな国の問題には首を突っ込まない方がいいんだろう。だけど俺はどうしても王様を助けたい。あの王様の事だ、多分しぶとく生き残ってるはずだ。だから‥みんなの力を貸してくれ。」
あやめの判断はきっと間違ってはいない。
だけど、みんなは俺にこうやってついて来てくれた。
ここまでついて来てくれた仲間には遠慮はしない。
俺の事を‥王様の事を助けて欲しいと思う。
「任せといてや!トールルズはこれからホット商会で開拓する国や。それがあんな変なのが王になるんは勘弁してほしいさかいな!」
確かに。
あんなのが王になりにでもしたら、俺たちはトールルズに近寄る事すらないからな。
「悪い奴はダメ‥天誅する‥」
天誅って‥
どこで覚えたのかねリルさんや。
どうせあやめとか正人のせいだろう。
あいつらにはリルに変な事教えないように説教しとかないとな。
アレカンドロも大きく頷いている。
お前もかい‥
「王様は私の話も聞いてくれましたし、元の世界に早く戻れればいいねと言ってくれました。なんとしても助けましょうね!」
そうだな。
恵も王様に好感を持っていたのか‥
何としてもみんなで助け出そう!
‥‥‥‥‥‥恵‥?
「ちょ、待て待て待て。なんで恵は一緒に来てるんだ?あやめたちと一緒に家で待ってるんじゃなかったのか?」
「え?私は一緒に行きますよ!だって‥‥マルコイさんと‥‥一緒にいたいんですもの‥」
はぁ?
何をいってるんだコイツは‥?
今回の目的は王様の安否確認と救出だ。
恵たちには関係ないはずだが‥
あ!
なるほど‥
一緒にいないと元の世界に戻る方法を探す事を俺が忘れてしまうとか思ってるんだろうか‥?
失礼な。
俺もそこまで抜けてはないぞ。
正人と一緒にするんじゃない。
「しかしいいのか?もし戦闘になったら、戦うのはモンスターじゃなくて人相手になるんだぞ。恵は後方支援だから直接戦う事は少ないかもしれないけど、もし俺とはぐれたりしたら恵も戦闘に加わる事になるかもしれないんだぞ。」
「大丈夫です!絶対にマルコイさんからはぐれませんから!」
どこからその自信がくるのかわからないんだけど‥
まあいい。
恵がいれば王様が怪我をしていたとしても、息をしていれば魔法で治す事ができる。
回復要員は多いに越した事はない。
「わかった。出来るだけ、誰かの側にいるようにしてくれ。みんな強いから恵1人くらいなら護ってやれると思うからさ。」
「はい!マルコイさんの側を1秒足りとも離れません!」
いや、それは邪魔だけど‥
「それに私覚悟決めましたから!もう迷いません!」
ん?
そうか‥
だができればお前たち勇者は人とは戦わずに元の世界に戻ってもらいたかったがな‥
「おう。覚悟を決めたのだったら俺は何も言わない。だが無理はするなよ。」
「はい!」
真剣な眼差しの恵。
出来るだけ護ってやらないとな‥
「覚悟を決めたみたいね‥」
アキーエさんも何故か真剣な眼差しをしていたのが気になったけど‥
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