第717話

「マ、マルコイ殿!今いったいどこからこれを出したのですか!?」


しまった、うっかりさんだ。


「えっとですね‥‥そうだ!冒険者が自分の手の内を簡単に話す訳がないですよ。」


ふっ。


確かそんな事を誰かが言ってたような気がする。


「いや、今そうだって‥まあ確かにその通りですが‥しかしすごいスキルだ。このサイズの物を持ち運びできるなんて商人が放っておきませんよ。」


はい。

商人は常にそばにいますから。


さて調理器具の準備は整ったけど、肝心の材料がないな‥


多分近くにはいると思うけど‥


「キリーエ。肉を見せてもらっていいか?」


試しに小声で聞いてみる。


「ええけど、どの肉がいい?ある程度はリルちゃんに捌いてもろてるけど、大きいのはかなり大きいで。」


ふおっ!


話しかけといて何だけど、本当にいた。


「ひっ!い、いつの間に!」


おお。


イェルンさんが思いっきりビビってる。


そうだよな、普通そうなるよな。

だって今まで2人だと思っていた場所に急にもう1人現れるんだもん。

そりゃビビるわ。


「そ、そうだな。適当に種類が違う肉を置いててくれ。肉を見てから何を作るか決めるからさ。」


「了解や。」


「ところでキリーエさんや。いつの間にそんな隠密が凄まじい事になったのかね?俺ですら気づかないとか怖いんですけど。」


「別に普通にスキル使ってるだけやで。まあ【遮断】やら【回避】、【感覚強化】とか同時に使ってるだけで。」


「同時に?そんなの頭が幾つあっても足りないだろ?」


「そやからうちの【並列思考】を使って位置取りやらを考えて動いてるけどね。」


「【並列思考】?」


「あ、マルコイさんには言うてなかった。うち【高速思考】が系統進化して【並列思考】になったんよ。」


あ、なるほど。


キリーエさんも強く?なってらっしゃったんですね。


「マルコイさんが料理する言うてから、色々動き回ってるんよ。新しいメニューとかもわかると思うし。」


そうだったんですね。

でも出来れば普通についてきてほしいんですけど‥


「マ、マルコイ殿のお仲間は凄い方ばかりなんですな。」


そうですね‥

でも特にキリーエとミミウは特出してるかもしれません‥


「そしたらお肉幾つか置いていくで。またすぐ戻ってくるさかい、新メニュー楽しみにしてるで。」


そしてすぐにキリーエの存在が希薄になる。


動いたかと思ったら、すぐに姿を見失った。


うわぁ‥


リルが俺に勝つって頑張ってるけど、キリーエに襲われたらあっさりと負けそうな気がする‥


正面から戦ったら何とかなるけど、あれ気を抜いてる時とかどうしようもないだろ‥


というか既に商人じゃなくなってる気がするんですけど‥


とりあえずキリーエさんは怒らせない事にしとこう‥




さてさて材料は‥

凄いな、見事なまでに肉ばっかりだ。


まあ今回のミミウさんの目的は肉狩りだったから、その成果といったところか。


う〜んどうしよう‥


とりあえず何の肉かわからないのは吊るして、焼いておけばいいだろ。

ケバブは前もやったけど、人気だったしな。


あとは‥


これはコカトリスか?

見た目は馬鹿でかい鶏だけど‥


毛をむしってみると、本気ででっかい鳥肉だった‥


そうだな‥


また丼みたいな料理もいいけど、せっかくお城で食べるんだから、ちょっとだけ凝ったものにしてみるか。


でっかい鳥肉を一旦お湯につける。


皮がピンとなったところで引き上げる。


お湯に溶かした水飴を鳥肉全体にかけていく。


次第に艶を帯びてくるので、それを紐で括り吊り下げる。


本来はここで1日置いて乾燥させるんだが‥


俺は調理工程をすっ飛ばしてくれる魔法があるのですよ。


しかも以前と違いエンチャント:穿つ者があるから、正真正銘の魔法が使えます!


魔力を練って風の魔法を使う。


鳥肉の周りに風の膜をはり、その中で乾燥させる。


すると水飴をかけていた鳥肉の艶が増してくる。


おお!


期待が高まるな。


20分くらい乾燥させたら、後はこれを油で揚げてと‥


ん?

なんか足元がぬるぬるするな‥


「美味しそうですぅ!」


うおっ!

ミミウさん?


それじゃ足元のぬるぬるは‥


ミミウさんの涎みたいですね‥




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