第679話
「は?」
デュワインの姿をした魔族の動きが止まった。
「すまんが、もう一度言ってくれるか?」
「だから、わたしは勇者じゃないって言ってます。」
「‥‥‥‥ふむ。聞き間違いではなかったのか‥ならば勇者でもないお前がデュワインを倒したと言う事か?」
「まあ倒したと言えば倒しました。まあ勇者じゃないからとどめは刺せませんでしたけど。」
「え?本気で言ってるのか?勇者でもない者が俺の血族倒したって事か?それじゃあ勇者は神聖国に?」
「いえ、勇者もこっちに来てますよ。」
「は?‥‥ま、まあいい。ならば神聖国への侵攻は問題ないといったところか。でも勇者じゃないならお前は何者だ?」
何者って言われても‥
「多分ただの冒険者と思うわ。」
「ただの‥‥冒険者‥‥‥?」
キョトンした顔でこちらを見る魔王。
なんだろう‥
さっきまでの魔族は生理的に無理だったけど、この人はそこまで嫌じゃない。
中身が変わるだけでこれだけ印象が違うものなんだ。
毛虫がトカゲになったくらい印象が全然違う。
「そ、そんな馬鹿な事が‥‥あるのか?ふ、ふむ。俺が知っている人族はそれほど強くなかったはずだが‥十魔の下位とはいえデュワインを一人で倒す事はできないと思うぞ。」
いや、思うぞって言われてもわたしも困るわよ。
「まあいい。それでは今のお前の強さを測らせてもらおうか。」
「え?わたし勇者じゃないんだけど?」
「む?そ、そうだったな。」
「少し待てば勇者は来ると思うけど、貴方たちが連れてきたモンスターの相手してるからしばらくかかると思うわよ。あと単純に戦いたいだけならプリカの城壁前で戦ってる人が戦う事が大好きな人よ。」
魔王は周りを見渡す。
「そ、そうか‥勇者と戦うためにデュワインの身体を借りたのだからな、無論勇者と戦うべきだろうと思うが‥」
魔王がこちらを見据える。
「俺の魔族としての勘はお前と戦うべきだと言っているんだがな。だがスキル【魔王】が勇者を倒せと言ってるんだ。全く面倒なスキルだ。」
魔王が面倒なスキル?
一体どう言う事なんだろう?
「とりあえず少し戦ってもらうとするか。現時点では勇者はそれほど脅威ではなさそうだ。スキル【魔王】もまだ抑えつける事ができる程度のようだしな。」
魔王が魔力を練る。
わたしもすぐに魔力を練る。
魔王の言ってる事に何か意味があるんだろうけど‥
マルコイに伝えないと。
あんまり今は考える事ができないし。
プリカの人たちに何て謝るのか考えてる最中だからね。
クワイスのゴーレムがモンスターを蹂躙している。
やっぱりデカいのは強いよなぁ。
脚を振り上げるだけでモンスターが吹っ飛んでるもんな。
脳筋魔族も踏み倒してたし。
ところどころ爆発してるのはエルエス兄さんのドッカン槍だろうか?
エルエス兄さんが違う名前つけてたっけ?
まあ愛着持って使ってくれるのは製作者としては嬉しいけど。
俺はとりあえず様子見をしながら傭兵団でおされているところを手助けしている。
だけど実際は傭兵団も問題なくモンスターを討伐しているし、神聖国もどちらかといえばおしている感じだ。
結局のところする事がないので衣装の見栄えをよくしようと頑張っていたりする。
どう見ても黒子みたいに見えるんだよなぁ‥
多分顔がいかんのだよ、顔が。
スキル【ディバイズメイキング】を使い、仮面を作る。
イメージは異世界に伝わる鬼だ。
口元は牙、額には2本の他のを生やす。
人には見えないように顔の布を外して仮面を被る。
よし、これで黒子には見えまい。
さてとそろそろ魔族も動きそうだから、警戒のために見回りに行くとしよう。
まだ魔族に動きは見えない。
まさか最初にラケッツさんにやられた魔族とはゴーレムに潰されたアフアーブだけしか来てないはずはないよな‥
注意深く見ていると‥
いた。
魔族じゃないけど、イルケルさん発見‥
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