第622話
「ふ〜ん。なんてスキルなの?」
アキーエにはスキル名が伝わっていないので説明する。
「スキルは【刀纏水姫】ってスキルだ。【タイムクラブ】の他にスキル【属性魔法:霧】を譲与結合してできたスキルだ。」
「マルコイが渡した【属性魔法:霧】の効果が何かわからないけど、前に渡した【タイムクラブ】で相手を弱体化するだけじゃなくて、自分やパーティ全体を強化する事ができるスキルって事なのかな。」
「ん。だいたいアキーエのであってる。」
なるほど。
パーティ全体を補助する事ができるスキルって事か。
個人としても強いリルが、味方の能力を上げる事が出来るなんて‥
最強じゃね?
「リルの目もかわった。弱点も見えるけど、悪いとこも見える。傷もなおせる。」
そりゃすごい。
「でもからだの力使うから、体力はなくなるみたい。」
なるほど。
自分の自己治癒力を高めて傷を治すって事になるのかな?
「パーティを強く出来るって何人くらいだ?」
「ん?ちかくにいる人はぜんぶ。この家と外の訓練してるところまでは大丈夫。あと強くできる人えらべる。」
「それは凄いな。相手を弱くするってのは?」
「直接斬ったらゆっくりになるけど、斬らなくてもじゃまして少しゆっくりになる。」
俺のエンチャント:氷のようなものか?
でもおそらく譲与結合の中にあるスキル【属性魔法:霧】が元になったものだろう。
だとしたら霧状の物だから不可視に近いと思う。
「範囲は?」
「こっちのが強くするより、たくさんできる。」
「強化するよりも広い範囲で使う事ができるってことか?」
「ん。」
そう言ってリルは頷いた。
えっと‥
これって、魔王軍との戦いにリルを投下したらだいたい勝てるんじゃないか?
やばい兵器を世に送り出してしまった気がするんだけど‥
味方の軍は強くなって、相手は弱くなる。
その上味方は傷ついても回復するとか何それ?
「これで打倒マルコイがじつげんする‥」
「いや、そこは打倒魔王だろ!」
「あ、そうだった。まちがえた。」
本当に間違えたと思っているのか‥?
(ピコーンッ!)
頭の中にいつもの音が響く。
は?
いや、譲与結合までしてしまったんだ。
これ以上何があるんだ?
『譲与結合のスキルレベルで既定を超えているスキルがあります。条件を満たしました。スキル還元しますか?』
スキルの還元?
どういう意味だ?
『スキル還元できるのはスキル【魔闘士Lv.5】になります。スキル還元しますか?』
意味がわからない。
意味がわからないけど‥
これはやってはいけない選択だと思う。
スキル還元‥
予想ではあるが、アキーエに渡したスキルを俺の元に戻すって意味じゃないだろうか?
頭に響いた声は既定レベルに達したから、相手から還元してもらうって事を言った。
それが借りれたりするのであればいいのだが、俺に還元する事でアキーエのスキルが無くなる可能性があるんじゃないか?
そんな危険な事をする必要がない。
「どうしたのマルコイ?真剣な顔して。」
「あんしんしろマルコイ。マルコイをたおすのは魔王のあとにしてやるから。」
「魔王の後でもお断りするわっ!なんで俺を倒す前提になってるんだ!」
まったく‥
このスキル還元については、みんなに話す必要はないだろう。
そのうち、アキーエだけに話す事にしておこう‥
次の日、俺は朝から動き出した。
さてさて、スキルの模倣も譲渡も終わったから、今日からせっせと魔道具作りに励む事にするか。
結構早起きしてしまったが、決して楽しみで早く起きたわけではない。
少しドキドキして早く起きただけだ。
獣王様からもらった家は庭も広く、アレカンドロが訓練しても全然問題ないくらいの大きさだ。
その隅にちょっと広めの小屋を建てる。
【スードウクリエイター】で作った物だから、簡素な小屋だけど物作りに使うだけだから問題ない。
外には『入るな危険』の立札を立てる。
さーて、楽しい物作りの時間ですよ。
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