第580話

翌日。


村には他にも色々とあったのでもう少し居てもよかったが、キリーエがもっと設備が整ってからにしようと言われ、獣人国に出発する事となった。


まあ距離も近いし、いつでも来れるしな。


しかし今更だが、こんな物を王国内の土地に作っていいものかと思ってキリーエに聞いてみたところ、なんでもこの周辺のみホット商会で土地を買ったらしい。


王国の土地って買えるものなのか?


「普通は無理やね。でも買えないならホット商会はエルフェノス王国から撤退します言うたら、快く売ってくれたわ。」


そ、そりゃ売るわな。


辺境の地とホット商会を天秤にかけたら、ホット商会の方に傾くに決まっている。


ホット商会の本拠地が近くにあるのであれば、流通の観点からも王国としては有難いだろう。


しかしそれだけかな?

王国が変な事考えてないといいけどね。


念のために今度キリーエと村の警備について話をしておこう。



まああれだけの城壁があるから問題ないとは思うけど‥

念のためにいつでも戻ってこれるように、家に転移部屋も用意したからとりあえずは様子見で。


すぐに王国が何かするとは思えないしね。



数日かかったが、無事に獣人国の領土に入る事ができた。


いくつかの村や街を通過して、目的地である首都ロッタスに近づいてきた。


結構長い間離れてたな‥


随分と久しぶりな気がする。

まあ色々あったからなぁ‥


外壁に近づき、門番の人に話しかける。


「ようこそロッタスへ!カードの提示を‥ん?」


ん?


「銀髪に眠そうな目‥もしかしてマルコイ様でしょうか?」


「え?は、はい。マルコイです。」


「やっぱり!あ、すいません。アキーエさん、ミミウさん、キリーエさんもいらっしゃいますか?」


「はい。」「はいですぅ!」「はいはい。」


「おかえりなさいませ。マルコイ様。どうぞお通りください。すぐに王城から使いがあると思いますので、よろしければご自宅でお待ちいただいてもよろしいでしょうか。」


「あ、ああ。わかりました。自宅には戻るつもりだったので、誰か残っていつでも連絡を受けれるようにしておきます。」


「ありがとうございます。他の方達もお連れ様でしょうか?」


「そうですね。行く時よりも6人ほど増えてます。」


「わかりました。そちらもお伝えさせていただきます。」


な、なんだ?

指名手配でもされてるのか?


「すみません。王様と宰相様が首を長くしてお待ちしておられまして。見かけたらすぐに伝えるようにとお達しがきておりました。」


「そ、そうなんですね‥」


「ささ!どうぞ中にお入りください!」


押し込まれるように街の中に入れられる。


なんだなんだ。


そんなに待ってたのか‥?

何か悪い事したな。

でも門番の人にまで伝えなくてもよかったのに。


「ふふ。王様も心配してたのね。」


「ん?何でだ?」


アキーエが笑いながら言ってくる。


「王様も国から送り出したはいいけど、本当に帰ってくるか心配だったんでしょ。」


「そうか?でもちゃんと戻るって言ってたのにな。」


「マルコイの事だから、他の国に取り込まれたりとか、もしかしたらどこかで建国するんじゃないかって思われてたんじゃない?」


「そんな。約束もしたし、建国なんてするはずがないだろ。」


「それだけ王様はマルコイの事を重視してるって事よ。もし建国するにしても、すぐに友好を結びたいと思ってるでしょうね。」


「そんなものか‥?」


「そんなものなの。マルコイはもう少しでいいから、自分の自己評価を高くした方がいいかもしれないわよ。」


う〜ん‥

そうは言ってもな。

気持ち的にはここから出立した時とあまり変わらないんだけどな。

周りの環境が変わったような気もしないし‥


仲間が増えた事くらいだと思ってたな。


でもそれくらい重視してくれてるのなら、勇者とかリルの件とか大目に見てもらえるかな‥?

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