第579話

銭湯の中は男性と女性に分けられていた。

まあそりゃそうだ。


分かれてなかったら天国に迷い込んでしまうところだ。


時間的に空いてたようで、男性用の風呂には誰も入っていなかった。


かけ湯をしてからお湯の中に浸かる。


広い浴槽に張られたお湯に1人でゆっくりと浸かるのは最高だな。


この大きさのお湯を作るのはどうやっているのだろう?

魔法使いのスキルで水を溜めて、火魔法で温める?


水道は整備されてたから、水をお湯にする行程だけでいいのか‥


今度キリーエに聞いてみよう。



「おおっ!これはすごいですなっ!これが全部お湯ですか!こんな贅沢な事をしてもいいのですか?」


「ははは。アレカンドロさん。これは銭湯って言って、みんなで入るお風呂なんだよ。だからお金を払ったら誰でも入れるんだ。1人のために用意するなら贅沢だけど、沢山の人がお風呂に入るためにお金払ってるから、銭湯をやってる側も儲かるんだよ。あたし達の産まれたところにも昔はたくさんあったみたいだしね。」


「ほー‥そうなんですか!それじゃあ、あやめ殿はこんな素晴らしい所によく行ってたんですか!」


「んー‥あたし達が居た頃は家にお風呂があるのが普通になってしまったから、段々と銭湯は無くなってたみたい。あたしも入るの初めてだし。温泉は行った事あるんだけど‥」


「温泉?」


「そ。地面の下から温まったお湯が湧き出てくるところがあって、それを利用してお風呂を作ってるんだよ。」


「ほわぁ‥そんな素晴らしいものが‥」


隣の女性が入っているところの声がこっちまで聞こえる。

特に声の大きなアレカンドロとあやめの声が響いてるな。


しかし温泉か‥


こっちの世界にはないけど、もし温泉を作る事ができたら‥‥


儲かるかもしれない。


今度ミミウの友達の精霊さんにお願いして、穴を掘ってもらおうかな‥


「それにしてもアレカンドロさん。凄いスタイルよね‥」


「そうですか?ゴツゴツして気持ち悪くないですか?」


「そんな事ないよ。引き締まってるけど、柔らかそうだし、胸だって大きいし!」


「うーん‥しかし胸なんて大きくて邪魔なだけですぞ?」


「でも男の人は大好きだからね‥あたしなんて絶壁だからさ‥」


おっと。

あまり聞いてはいけない会話が聞こえてきた。


盗み聞きしてるみたいで申し訳ないな。


もう少し入っていたかったが、あがるとするか‥


「それにしてもみんな結構胸あるわね‥恵は知ってるけど、ミミウちゃんもそうだし、アキーエさんも。みんな胸当てとかしてるからわかんなかったけど、あたしの仲間はいないのね‥」


「まだあやめちゃんも大きくなるわよ。だから気にしなくていいんじゃないかしら?」


アキーエも結構あるのか‥


アキーエは近接戦闘をするようになってから、胸当てなんかをつけるようになったからわからなかった。戦闘の危険がなさそうな時は、割とゆったりとした服を着てたしな‥


はっ!

いかんいかん。

早く外に出よう。


「誰かに揉んでもらったら大きくなるって聞いたことがあるんだけど、揉んでくれる人いないしなぁ‥イケおじさんに頼んだらよかったかな‥」


「イケおじさん?」


「そ。『アウローラ』の団長さん。でもアキーエさんはいいわよね。マルコイがいるから。みんないつからマルコイと付き合ってるの?」


「え?」


「え?」


「あ、あれ?みんなマルコイの彼女だったりしないの‥?」


「違うわよ。みんなただのパーティメンバーよ。」


「そ、そうなんだ‥」


「そうですな!とりあえずアキーエ殿に関してはパーティメンバー以上、恋人未満といったところですがな!」


「へえ‥そうなんだね。でもこんなに可愛いアキーエさんが側にいるのに、恋人未満って‥どんだけヘタレなのあいつ‥?」


こ、心が痛い。



さてと‥

上がるとするか。


決して居づらくなったわけではない。

もう身体が温まったからあがるのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る