第555話
「さあ審査員の方、今回のペイセルさん対ラケッツさんの勝敗をお願いします！」
できればラケッツに勝って欲しいけどなぁ‥
ラケッツが勝ったら俺が負けても、お願いされるのは魔道具だろうし。
もしペイセルさんが勝てば何をお願いされるか分かったもんじゃない‥
しかし‥
「木札があがりました！4対1でペイセルさんの勝利です！」
やはりそうなるよな。
やはり平凡ラケッツではペイセルさんに勝つことは難しかったか‥
「それでは決勝はマルコイさん対ペイセルさんになります！」
ここは負けるわけにはいかないな‥
1つだけお願いできるとはいえ、おそらくタルタル教関連のお願いをされるはずだ。
そ、それだけは‥
俺の未来のためにも防がなければ！
「それでは決勝戦の準備をお願いしますっ！先程のラケッツさんとの勝負では新たなタルタル料理で審査員を魅惑した、タルタル教のアイドル！彼女のおかげで多数の国の偉い人がタルタル教に改宗しています！今回はその料理で審査員の心を鷲掴みにできるのかっ！？」
そ、そんな事してたんだペイセルさん‥
もしかしてグルンデルさんを改宗させたのペイセルさんだったりするんじゃないだろうか‥
「対するは決勝で勝利をもぎ取り、メンセンさんの恋を無惨にも打ち砕いたマルコイさんです！魔道具作成としては狂った科学者として有名ですが、料理もその狂った感覚を存分に発揮しています！」
よしわかった。
ライリーよ、その喧嘩買ってやるぞ。
「それではいよいよ決勝戦！2人ともお願いしますっ！」
ペイセルさんが合図と共にすぐに動き出した。
卵、酢、玉ねぎといつも通りタルタルの材料を取っている。
今回は何を作るつもりだろうか。
しかし俺が初めてタルタルソースを作った時は、フライにかけたらさっぱりして美味しいよなって感じで作ったんだよな‥
それがまさかここまでなるとは‥
まあここまでというか、宗教まで出来るのは誰も予想できないよな‥
ペイセルさんが鉄板で小麦の粉を溶かした物を焼いている。
俺が作ったせんべいの時よりも粘度があり少し厚みがあるな。
何を作っているのかわからないけど、俺も負けずに頑張るか。
俺はタルタルは使わずにエビの旨味で勝負だ。
『スペース』から回収していたグレートロブスターの殻を取り出す。
今回の料理は殻を使って、エビの旨味を最大限に使うことにする。
今度はエビの旨味たっぷりのスープを作る事にした。
相手はタルタルソースを使ってくるからな。
それに負けないくらい味にインパクトのある物を出さないと。
まずはエビの殻を鉄板で焼く。
それに玉ねぎを加えて塩胡椒する。
そして取り出した物を潰して水を加える。
それを裏ごししてエビの旨味だけを取り出す。
そこに果実酒、トマトペーストや香草を加えて煮詰める。
アクをとりながら水気が半分くらいになれば完成だ。
エビのビスクってスープでエビの殻ごとスープにしてあるから、スープの味が濃い。
これこそエビ料理って感じだけど、相手はペイセルさんだ。
フーラさんに続き、タルタル料理に関しては油断できない相手だ。
俺は異世界の知識をフル活用してるのに、情報が何もない状態から色々なタルタル料理を作り出しているからな‥
「おっと！マルコイさんの料理が出来たようです！」
ライリーが近寄ってきて、マイクを向けてくる。
「ああ。出来だぞ。」
「そうですか！それではどんな料理はなりますか！」
「前の料理では、エビの切り身をそのまま潰してせんべいにしたが、今回は殻を使ってスープを作った。このスープも十分にエビを感じることができると思うぞ。」
「おおなるほど！それはとても美味しそうですね！おっとここでペイセルさんも調理が終わったようです！」
自分の調理に集中してたから、ペイセルさんが何を作っていたか見ていなかったが、今度は何を作ったんだ？
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