第550話

「さあ2人の料理ができたようです!2人に料理について伺っていきたいと思います!」


ライリーはそう言って2人に近づいていく。


「ライリーちゃん!頑張ってぇ!」


ん?


ライリーは進行係だから出場してないんだけど‥


誰だライリーを応援してるやつは?


声の主を探すと額に布を巻いた正人がいた。


額の布には異世界の文字で、『らぶライリー』と書いてある。


ふむ。

やはりライリーは正人の好みだったか‥


しかし恐ろしいのは正人の精神力だな。

あそこまであやめに白い目で見られたら、心折れそうな気がするんだけど‥


しかも恵にまで引かれてるし‥


「は、はは‥お、応援ありがとうございます。それでは進行を進めていきますね。」


ライリーも引いてるぞ。

気づけ正人!


「まずはラケッツさん!この料理についての意気込みを教えてください!」


「はい!平凡と言われてきた俺が、目立つためには変わり種の料理を作る必要があります!そこで考えたのが、ホット商会で新しくでたトマトソースを使って、甘辛く炒めた『エビと見間違わんばかり!魚の練った物の甘辛トマト炒め』です!」


おい!


ちょっと待て。

今見間違わんばかりって言わなかったか?

それって‥


「と、という事はこの料理にはエビが入っていないと‥?」


「はい!」


頭を抱えるライリーとキリーエ。


ラケッツよ‥

今回の料理はエビ料理だぞ。

エビ風料理を作ってどうするんだ‥?


「な、なるほど!随分と独創的な料理に仕上がったようです!続いてはアキーエさんはどうでしょう!」


「そうね。わたしは火魔法、特に爆発する魔法が得意なの。だからわたしの得意な爆発を料理に取り込んだわ。みんな食べてみてびっくりするわよ。名付けて『エビの冷製びっくり炒め』よ!」


もう熱いのか冷たいのかすら疑問なんだが‥

それにびっくりって‥

びっくりで済むよな‥?


あ、キリーエがいそいそとポーションを用意している。

審査員の人たち‥

ポーションがあるから、死ななかったら大丈夫と思うので頑張って食べてください‥


「そ、そうですか‥2人とも随分と独創的な料理になっています!そ、それでは審査員の方々、試食をお願いします!」


そりゃライリーも困るわな。

後ろで「困った顔もらぶりー」とか言ってる正人がうるさい。


審査員の人たちはとりあえずラケッツの料理から食べているようだ。

そりゃ危険性のない物から食べるよな‥


「ラケッツ‥」


「どうされましたかクワイスさん?何か聞きたい事でもありましたか!」


ライリーがクワイスの元に行く。


「ラケッツ。お前の料理は確かに美味い。しかしエビでよかったんじゃないのか‥?魚の練った物をエビに見立てる必要があったのか‥ちなみに味は美味いが平凡だぞ。」


膝から崩れ落ちるラケッツ‥


まあね。

奇をてらうつもりで作ったんだろうけど、肉が大豆だったとかならまだしも、エビが魚の練ったものって‥

あまり変わってない上に味が平凡なのは何となくわかる気がする。


「そ、そうですね!少し厳しいお言葉でしたが、ラケッツさん審査はまだ残ってますよ!負けるとは思いますけど、気を落とさないで!」


ラケッツが地面に突っ伏した。


ライリーにとどめをさされたか‥

がんばれラケッツ‥


「さてそれでは料理も魔法も爆発満載のアキーエさんお願いします!」


おい!

だから料理は爆発しちゃダメだって。


アキーエが皿を審査員の元に持っていく。


エビを炒めてたみたいだけど、それっぽい匂いは全くしない。


そのかわり辺り一面に甘い香りが漂っている‥


エビの料理なのに、甘い匂いがする‥


アキーエの料理の工程からデザートを作っている雰囲気はなかったし、できればエビでデザートはやめてもらいたい。


悪い予感しかしないのは気のせいだろうか‥


審査員が意を決して料理を口に運ぶ。


そして審査員の動きが止まった‥





あ、もちろんミミウさんだけはパクパク食べてますけどね。

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