第551話

「わーっ!何か口の中がパチパチして面白いですぅ!」


なに?


やっぱり口の中が爆発してるのか?


その割にはミミウは何か楽しそうにしているが‥


「ほほう、これは面白い。口の中でパチパチと弾けていますね。」


「確かに。これは飴ですかね‥?飴の中の気泡が弾けている‥もしかしてこれはホット商会で出している炭酸を固めた物なのか?」


なるほど。

それは凄い発想だ。

炭酸を飴で固めて、口の中で飴が溶けたら炭酸が口の中で弾けるわけか。


そりゃ口の中がパチパチするな。


「ミミウやわたしも好きなんだけど、炭酸水を固めたらどうなるのか試してみたの。マルコイの冷やす魔道具を使って凍らせたら炭酸ごと凍って面白かったんだけど、氷だと料理で使えないでしょ。だから飴にして、溶けにくく味が付いている物にしてみたのよ。」


そんな事を試しているなんて知らなかった。


アキーエは料理が出来ないと思ってたけど、克服するために努力してたんだな。


でもなアキーエ‥


それはあくまで飴だ。

多分、お菓子やデザートで使う物だ。


エビを甘く煮たりしたら何とかなったのかも知れないけど、普通に炒めたエビを入れるものではないよ。


それならゼラチンとかで固めた方がよかったんじゃないのか‥?


あ、今度ゼラチンもキリーエに頼んでみよう。


「ふ、ふむ‥と、とても独創的な料理ですね。このパチパチする食感はとてもいいんですが‥」


スキャンも言い淀む。


「ア、アキーエさん。この料理は味見とかはされたんでしょうか‥?」


「え?味見?わたし今日思いついて、今初めて作ってみたから、味見なんてしてないわよ。エビと合わせるなんて思ってもいなかったし。」


さすがアキーエさんだ!


みんなの予想の斜め上をいく。

そして本人は大真面目だから面白い。


だったら何故自信を持って参加したのかを知りたいが、この料理を試してみたかったんだろう。


「でもパチパチして美味しいでしょ?」


審査員はアキーエの迫力からか、ただただ頷いている。


「はい!パチパチしてとても面白かったですぅ!エビも甘くてとても美味しかったですぅ!」


さすがミミウさんだ。


エビ料理はなんとなく惣菜として食べる物だという先入観があるから違和感があるんだ。


ミミウさんのようにアキーエのエビ料理をデザートとして食べれば美味しいのかもしれない。


俺は遠慮したいけど‥




「さ、さあ2人の独創的な料理を食べていただきました!審査員の方には勝敗を決めていただきましょう!」


独創的な料理ってずっと言ってるな‥

多分それ以外に褒めるところがないのかもしれないけど‥


審査員の人たちも決めかねているようだ‥





「おっと!ようやく木札が上がりました!勝者は4対1でラケッツさんの勝利です!」


え?


ラケッツってエビ使ってないけどいいのか?


「なるほど!エビを使っていないのにこの結果は想像できませんでした!それではスキャンさん!感想をどうぞ!」


アキーエがガックリと肩を落としている。

味見してないのに、自信があったのか!?



「えっ!お、俺が感想を言うの‥?えっと‥そ、そうですね、アキーエさんの料理もとても美味しかったんですが‥‥‥」


「ですが‥続きは何ですか?」


アキーエが少し怖い。


「そ、そうだ!アキーエさんの料理は少し甘過ぎたんですよ。お、男の俺にはあまりにも甘みが強くて。甘いのが苦手だからすみません!」


他の男3人も頷いている。


「わ、わたしもすごく男っぽいところがあって!そ、それでついついラケッツさんにあげてしまいましたわ!」


無理矢理だなスネタさん‥


「なるほど!そうなんですね!スキャンさんはホット商会の今川焼きとか好きだから、てっきり甘い物が好きと思ってました!あれは我慢して食べてたんですね!」


「そ、そうなんだよ!」


スキャンが涙目になっている‥


スキャンに日頃のうっぷんでも晴らしてるのか。

なかなか辛辣なライリーさんだ。

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