第528話
「マルコイさん。私達はどうしたら‥?」
「さっきも言ったが、明日の起こる合図と共に国から出るだけだ。その途中に何があっても絶対に国を出る事を優先させろ。もし明日全てが変わればお前たちがこの国に戻る事も出来るかもしれない。でも失敗したり、グルンデルがもしかしたら権力を持った事で変わってしまうかもしれない。それを見極めるためにもお前たちは一度外に出たほうがいい。」
「わかりました。その時マルコイさんは?」
「俺はやる事があると言ったろ。それはここに残ってする事だ。だからお前たちと一緒には行けない。俺は俺で、神聖国にケリをつける必要があるからな。」
「わかりました。」
恵は少し悲しそうな顔をする。
「心配するな。信者には怪我がないようになるべく気をつける。だが、聖王やその取り巻きまでは期待するな。あいつらは恐らく変わりようがない。」
「はい‥よろしくお願いします。」
「それと俺は一旦この人形を抜ける。お前たちはここに待機して合図を待て。いいな。」
4人とも頷いた。
よし。
でも賢者は意味わかったのか?
とりあえず周りと一緒に行動したらいいと思ったかな?
「正人。賢者は頼んだぞ。記憶がないなら戸惑う事も多くあるはすだからな。」
俺は記憶をなくした賢者を見る。
「ヒッ!」
俺と目が合い、何故か軽い悲鳴をあげて後退りする賢者。
うむ。
正常な反応だ。
しかし何故か賢者の洗脳を解いてもリルの時みたいにワクワクしない。
何故だろう‥?
まあいい。
家に戻った時にリルにしてみればわかるかもしれない。
そのためには鉄製の鎧でも着ておけば‥
いや、あいつ鉄ごと斬りそうな気がするな‥
いかんいかん。
今はそれどころじゃなかった。
「この身体は教会の隅に置いておいてくれ。使うかもしれないし、使わなかったとしても回収に来るから。」
俺はそう言ってスキル【アバター】を解く。
俺の意識は暗くなり、目を覚ました時はいつもの部屋の天井になっていた。
「マルコイさん、行ってしまいましたね。」
「ほんと。突然やってきて、あっという間に卓を助けて逃げる算段までしてくれて‥どんだけチートだっていうのよ全く。」
「本当だよな〜。俺たち異世界人より異世界人らしいっつーか。」
「ふむ。チート?それは神から得た能力の事だな!俺ももしかして持っているのか?」
「卓!?お前何か思い出したのか!?」
「いや、チートと言う言葉が俺の心を揺さぶったんだ。」
「あ〜、卓もあたし以上に異世界転生に憧れてたからね。そのための知識はたくさん溜め込んでた。それこそ近代兵器とか色々。その知識もマルコイに渡したら、もっと凄い事になるんじゃない?」
「え?今以上?それやばいんじゃね?」
「た、確かに‥」
「でもマルコイさんとの出逢いが、私達が異世界に来て1番よかった事だね。」
「そうね。でもマルコイ今から何をやらかす気なんだろ?楽しみって言うか、心配って言うか‥」
「まあマルコイさんのことだから、また凄い事すんじゃね?」
恵達は明るくなり始めた窓の外を見ながら久しぶりに笑顔を交わしていた。
おおう!
人形の身体から自分の身体に戻ると、力が溢れるというかなんというか‥
抑制されていた分、効率的な身体の動かし方なんかを考えていたから随分とスムーズに動ける。
それに魔力も前より上がったような気がする。
魔力の絶対量が増えたというよりも、魔力を使ってなかった分が溜まっていたって感じだな。
今までは一晩寝たくらいでは魔力が回復してなかったんだろうか?
予想してなかった事だけど、少し強くなれたようで嬉しいぞ。
さて次の行動をするか。
部屋を見渡すと椅子に腰掛けたまま、眠っているアキーエがいた。
もしかして俺が帰ってくるのを待っててくれたのかな?
「アキーエ。」
声をかけるとアキーエが起きる。
「んっ‥あ、マルコイ。おかえりなさい。」
んはっ!
抱きつきたい!
いかーん!
まだする事があるし、急がないと‥
欲求を我慢してアキーエに尋ねる。
「すまないアキーエ。今日中に終わると思うけど、もう一度神聖国に行ってくる。ミミウとアレカンドロはどこにいるかな?」
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