第522話
「ところで賢者の事だが‥どうだ?使い物になりそうか?」
「はっ!原因がわかりませんが、洗脳の魔道具の効果が薄れていくのは変わらず、新しく洗脳をかけたのですが効果なく賢者の中身が壊れかけているようです。」
「そうか‥せっかく都合よく使えそうな奴であったのに残念だな。他の者で代用出来んのか?」
「はっ!それが勇者達のパーティでは賢者が他の者を率いていたようで。他の者ではあまり効果がないと思われます。」
「そうか‥ならば全員洗脳するか?」
「しかしそれでは魔王討伐が難しくなるかと‥」
「ふむ‥面倒だな。また勇者を呼ぶ事は可能か?」
「はっ!今の魔力状況ではあと100年はかかるかと。」
「その魔力を早める事はできるのか?」
「えっ!あっ、も、申し訳ございません!」
「よい。それでどうなのだ?」
「はっ!‥‥‥魔法使いであれば人数を用意してギリギリまで魔力を吸い上げれば数年程度なら早くなるかと‥」
「そうか‥ならば魔法使いでもそれ以外でも死ぬまで魔力を吸い取って、すぐに召喚するためには何人程必要だ?」
「‥‥‥魔法使いであれば1,000人程度、そうでなければ10,000人程度と思われます‥」
「そうか。ならば邪教徒どもを拐ってこい。10,000程度であれば二月もあれば充分であろう。」
「‥‥はっ!」
「何か不満か?」
「いえ、決してそのような事は‥」
「ならば即取り掛かれ。召喚が済み次第、今の勇者は全員洗脳するがよい。」
「はっ!」
「ふん。どうせ勇者は黒目黒髪であろう。表に立つ勇者の姿が多少変わったところでわかりはせん。」
報告していた騎士がその場を去る。
「ふん。どれだけ魔道具を集めようとも我がウルスート神聖国の魔道具を超える物はない。勇者を召喚できる魔道具を超えるものはな。」
騎士ががいなくなり静かな空間に、男の呟きが響く。
おそらくこいつが聖王なんだろう。
こいつは駄目だ。
こいつが聖王である限り、多くの人が死ぬ。
それは俺の知らない人かもしれないし、知っている人かもしれない。
こんな奴を野放しにするべきではない。
今ここで殺すか?
いや、仮にも聖王。
この国のトップだ。
もし仕損じた時が、次が困難になる。
それに召喚の魔道具か‥?
それもどこにあるかわからない。
隠されてしまえば見つける事ができなくなる。
おそらく魔道具はこの大神殿にあるだろう。
だとしたら全てまとめて一変に破壊するしかない。
ここは我慢だ。
魔王が魔族以外を滅ぼそうとしているが、こいつが聖王である限り、魔王を倒しても意味がないんじゃないだろうか‥?
それにこの聖王だけが問題なのか?
もしかして今までの聖王もすべてこんな奴だったのか?
もう女神を祀ってるとか関係ないこの国は‥
止めないといけない。
勇者たちをこの国から出した後に召喚の魔道具を破壊する。
そこまではいいのだが、この大神殿を破壊してしまっては、この国の信仰対象がなくなり国として立ち行かなくなってしまう。
正しい女神を信仰できる人か、それ以外の信仰できる神でもいれば何とかなるのかもしれないが‥
考えても結論はでない。
今はとりあえず賢者が先だな。
俺はその場を離れ、賢者の元に向かう事にした‥
賢者がいる場所は牢獄のような場所だった。
魔道具の反応で近くまで来たが、それらしき部屋は外から確認できず、窓もなかったため他の場所から侵入して神殿内部に入る事にした。
魔道具の反応が部屋の中からあったため、鍵を破壊して中に入る事にした。
中に人がいたら問答無用で気絶してもらう予定だった。
しかし中には誰もおらず、ひとりの男が部屋のベッドに横たわっていた。
黒目黒髪の眼鏡をかけた男だった。
しかし彼の目には光がなく、表情もない。
賢者、財前卓は、窓も何もないベッドだけがある部屋で寝かされていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます