第507話

「よお!元気そうだな!」


俺はそうあやめたちに声をかけた。


元気なのは見てたから知ってるんだけど、怪我もなくて本当によかった。


あれ?

あやめが俺を見たまま固まっている。

どうした?

あの底辺騎士に遅効性の毒でも盛られたのか?


「マ、マ、マ、マ‥」


マ?

マルゲリータ!

おお、ピザも作ってみたいなぁ。


はっ!

俺は慌てて周りを見る。

さ、さすがにキリーエとミミウはいないようだな‥


「マルコイーーーー!」


「おわっ!なんだいきなり!」


「いきなりじゃないわよっ!なんであんたがここにいるのよ!あたしはこの遺跡から戻ったら、あんたを探しに行くつもりだったのよ!そうよ、今から戻ってマルコイを探しに行くから、少しマルコイは待ってて!」


おい‥

混乱して何を言っているのかわからんぞ。


「まあ落ち着け。」


「おー!マルコイさんじゃん!おひさ〜!」


「おお、正人久しぶり。お前は相変わらずだな。」


「うっす!それ褒め言葉?あざーっす!」


褒め言葉かぁ‥

ま、まあ正人は変わらないのがいいところだから、褒め言葉といえば褒め言葉か。


「ここに入ってからずっと見てたけど、相変わらずで安心したよ。変に神聖国に感化されてなかったみたいだしな。」


「へ?ずっと見てたってどうやって?マルコイさんって幽体離脱まで出来るようになったとか?やっぱハンパねー。」


「いや、その幽体なんちゃらが何かわからないけど、意識をスライムに移してついて来てたんだよ。」


「マジで?スライムに乗り移ったとかマジハンパねぇ。もうそれ幽体離脱ってんじゃん!」


「ちょ、ちょっと待ちなさいよっ!あたしを置いて話進めないで!最初からついてきた?スライムに乗り移った?順を追って説明しなさい!あっ!もしかして、この遺跡にもマルコイが関与してる?してるわよね!どこからしてるの?この悪意ある罠はマルコイが関与してるの?してるわよね!キィーーーー!」


おわっ!

なんだよいったい!


突然発狂して。

情緒不安定ですか‥?


「はぁはぁはぁ‥」


あやめが追いかけて来るので、思わず逃げてしまったが、落ち着いたかな?


「マルコイ‥はぁはぁ‥なんで逃げるのよ‥?と、とりあえず何も言わずに一回殴られなさい。」


「え?やだよ。」


追っかけてくるから逃げたけど、まさか殴るつもりだったなんて。

とんでもない奴だなぁ。


「キィーーーーーッ!」


その後しばらく、俺とあやめは追いかけっこをしました。


ふっ。

本来の姿に戻った俺が追いつかれるはずがあるまいて。




「はぁはぁはぁ‥お、覚えときなさいよ‥絶対に一発殴ってやるんだから‥はぁはぁ」


うーん、絶対やだ。


「はぁはぁ‥と、ところでマルコイ。あなたこんなに手の込んだ事して何がしたかったの?」


「手の込んだ事?」


「この遺跡の事よ。元からあった遺跡にマルコイが手を加えたんでしょ?これだけの悪趣味なトラップを仕込んだんだから、かなりの月日を要したんじゃないの?」


悪趣味とは人聞きの悪い。


「いや、この遺跡は俺が作ったから、手を加えたわけじゃないぞ。それに作ったのもそれ程時間かかってないからな。」


「うそ‥こんな遺跡が1人で作れる訳ないじゃない‥いくらマルコイがチートだからって、流石に‥」


「いや本当だって。それでもやっぱり数日は‥てかお前悪趣味なトラップとはなんだ、悪趣味とは!」


全く失礼なやつだ。

遺跡作るよりも、トラップ作る方がよっぽど時間かかってるんだぞ。


「マジで?そんじゃマルコイさんなら、遊園地作れたりするんじゃね?俺らの世界の物をこんだけの完成度で再現するとか、マジ神!」


神様認定はやめなさい。

もう宗教関係はお腹いっぱいです。


「あれだけ悪質なトラップ作っておいて‥マルコイ‥やっぱり2発殴らせなさい!」


「やだよ。」


「キィーーーッ!」


全くなんで、こんなに怒ってるのやら‥?

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