第502話

偉そうな騎士の声かけにも反応せず、『影法師』は攻撃を続ける。


そんな声かけに反応しませんよ。

だって六腕ピエロと違って、『影法師』は喋れませんから。


しかし人工核に命令を登録はしているけど、薄皮1枚斬るのが上手いなぁ。


薄皮1枚とはいえ、出血はするし結構な数の傷をつけているので、騎士は血塗れになっている。


「がっ!あやめ様?いい加減にされてください!」


騎士は『影法師』と距離をとるために退がる。

そして自分の身体から流れる血を見る。


「く、くそっ!何故私がこの様な目に遭わねばならん‥この様な‥」


そんな事をぶつくさ言ってるけど、お構いなしに『影法師』は騎士を攻撃しようとする。


「いい加減にせぬかっ!この小娘が!此方が手出しせぬ事をいい事に好き勝手しよって!もう許さん!」


おお?

遂に我慢出来なくなったか?


まあいきなり1人にさせられて、仲間と思っていた奴に攻撃される。

ストレスでおかしくなってもしょうがないかな。


それじゃあ『影法師』さんは退場してもらうか。


「ぬっ!逃さぬぞ小娘がっ!」


『影法師』はミラーワールドの鏡をスルスルと進んで姿を消す。


騎士は追いかけるが、鏡にぶつかりもんどり打って倒れた。


「許さぬ‥許さぬぞ!ふひひひ‥そのか細い首を胴体から切り離してやるわ!待つがいい!」


おいおい。

かなりきてますな。

多分正人あたりのお守りでかなり溜まってたんじゃないか?

それがあやめの所為で爆発したかな?


偉そうな騎士さんは、鏡にぶつかりながら物凄い勢いで進んでいく。


この騎士さんは、あやめたちに不信感を覚えさせるために必要だけど、直接相対させるのは危険だな。


俺は天井から【スードウクリエイター】を使用して、狂った騎士が同じ所を行き来するように閉じ込めた。


後は鏡に映ったあやめを見て、有る事無い事言ってくれたらお役御免かな。


奇声を発しながら走り回っている騎士はほっといて、次の標的に狙いを定める。


実は騎士にちょっかい出すと同時にあやめさんにもちょっかい出していた。


正人には今回ちょっかい出さない。

だって正人は気づかなさそうだもん。


偉そうな騎士さんが発狂する前にあやめにも『影法師』を投入していた。


この鏡の部屋で何をしたら怖いかと考えてみたけど、やっぱり1番怖いのは鏡の中の自分が勝手に動くのが1番怖いと思うんだ。


あやめが鏡にぶつからない様にそろりそろりと動いている。


そこに『影法師:あやめ』を投入!


少しだけ別の動きをする『影法師』。


すると勘のいいあやめはすぐに気づいて『影法師』を見やる。


気のせいだと思い振り返った時に、少しずれて『影法師』が動く。


それに気づいたあやめが恐る恐る『影法師』に近づいていく。


そこで【デバイスメイキング】で顔を覆う布を作った時に取り付けた、魔力回路が活躍する!


『影法師』がニヤリと笑ったのだ。


実在は布を引っ張っただけなのだが、あやめからは笑ったように見えただろう。


「だ、誰っ!?」


か、完璧すぎる演出だ。


しかもあやめの台詞も素晴らしい!


俺が見たかった絵面の7割は見れたかもしれない。



そこにちょうどタイミングよく、偉そうな騎士さんや他の騎士たちの声が聞こえる。


ひひひ。

恐怖は最高潮!


あれ?

これって結局いつものトラップ屋敷と同じようになってる様な‥


おかしいな。

最初はみんなに楽しんでもらおうと思ってたんだけど、どこで道を踏み外したんだろう?


あ、違った。

あやめたちを神聖国から出国させるための準備だった。

危ない危ない、完全に忘れていた。


それじゃ目的を果たすために、地形を少し変えて偉そうな騎士さんと鏡越しに対面してもらいましょうか。


う〜ん、いい感じに本物のあやめ相手に発狂しておりますな。


あとはゴール間近でもう一度対面してもらって終わりかな。



‥‥‥。

もうちょっとだけ、遊んでみようかな‥

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