第500話

正人があたしに会った?

でもそれってあたしじゃないわよね。


もしかしてさっきの騎士団の人達の悲鳴に近い声や怒声なんかも、あたしや正人の偽物に会ったって事?

鏡が乱反射して少し動いて場所を変えたら、鏡に正人や騎士団の人が映るけど、それに混じって行動しているあたしや正人の姿をしたモンスターがいるって思った方が良いかもしれない‥


「正人。あんたあたしの側にいて。」


ここで別れて騎士団の人達を探すのは拙い気がする。


「ふっ。しょーがねーな。そこまで言うならお前の気持ちに応えてやるっしょ。でも今回だけだぜ。あやめは俺のタイプから少し外れてっからさぁ。気持ちだけもらっとくって感じ?」


な、殴りたい‥

あたしがあんたを好きで側に居てって言ったわけじゃないのっ!


「うるさい!一緒にいたら、それ以外のあたし達が敵って事でしょ!」


「あー、そっちな感じな。」


「多分だけど、あたしと正人の偽物が出てるんじゃないかなと思う。2人で行動して、他の騎士団の人達を助けに行きましょう!」


「そーだな。そんじゃ行っちゃう感じ?」


あー、はいはい。


しばらく正人と2人で鏡を伝いながら歩いていると騎士団の人が鏡に映った。


これは本物?


正人のように肩パンするわけにはいかないので声をかける。


「あの、大丈夫ですか?」


すると騎士団の人は目を血走らせながら、こちらを向く。


「そこにいたか!!もう許さんぞ小娘が!」


突然手に持った剣を振り回して此方に駆けてきた。


甲高い音を立てて、剣が弾かれる。


「ちっ!これも鏡かっ!そこを動くなよ小娘!お前が俺を殺す気なら、先にお前を殺してやる!」


な、何を言っているの?


よく見ると、騎士団の人は身体中に傷を負っていて血を流している。

傷は浅く、皮を切ったくらいの傷だけど、無数の傷だ。


「勇者だろうと何だろうと関係ない!此方を殺す気なら、容赦はせん!貴様らは遺跡で行方不明になったと報告する!だいたい貴様らのような甘っちょろい若造が勇者だと?何故、敬虔たるウルスエート様の信者である俺様が貴様らのような若造に頭を下げねばならん!そうだ!ここで貴様らを殺して俺が勇者になってやる!そうだ!きひひひひ!」



こ、これは拙いわ。

ちょっとおかしくなってない?


まあ1人出口がわからない状態で私の偽物に攻撃され続けてたとしたら、おかしくなっても不思議じゃないけど‥



でもこのまま騎士団の人と会ったら確実に攻撃されるわ。


「ねえ正人‥どうしたらいいと思う?」


「これマジすっげーな!マジで遊園地のアトラクションじゃん。ダチとどっちが早く抜け出すか競争して顔面から鏡にぶつかって、鏡かち割った記憶がある〜。おい、あやめ!どっちが早く出れるか競争しようぜ!」


はぁ‥

正人は変わらず平常運転ね。


でも正人の案もいいかもしれない。


このままここに留まるよりも、これが迷路だとしたらゴールがあるはず。


ゴールにつけば何かあるかもしれない。

ここにいても問題は解決しなさそうだから、とりあえずゴールを目指してみよう。


「どっちが早くじゃなくて、2人で行動してゴールを目指しましょ。ここで別れたら、また違う正人に会っちゃうかもしれないし。」


あたしがそう言って振り返ると、正人が2人いた。

鏡に映っている正人だろうと思ったけど、違和感がある。


同じ動きをしていないのだ。

動かす手が逆だ!


私はすぐにランスで2人を薙ぎ払った。

本物なら慣れてるから大丈夫。

偽物なら‥?


「いってー!だからお前突然なにすんだよ!?」


こっちは本物。


もう1人は‥


ランスの攻撃は腕で防御したみたいだけど、防御した方の肘から下がなくなっている。


そこからは血が流れるわけじゃなく、切断面からは木片が見えている。


やっぱりモンスター?

追撃しようとしたら、通路をぶつかる事なくスルスルと逃げていった‥

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る