第413話
街のお店に関して、新しくお店を出すとしたら、既存の潰れた店を買い取るか、街の端に店を構える事になる。
都合よく宿の通りなんか空いてたりする事は少ないし、あったとしても大手の商会が買い取っている。
それに、それぞれ武器は武器、洋服は洋服など分野別で固まって店を出す傾向がどの国にもある。
店を継ぐなどならまだしも、新しく店を出す者は固まった場所の奥に店を出さなければいけない。
そんな状況で新規の商人の店が売れるはずがないのだ。
なので新しく店を出そうとするなら大きな商会の傘下に入るか、オマールさんのように違う商会の下請けをしながら機会を待つかしかない。
しかしこのショッピングモールは、そんな今までの流れをぶった斬る施設になる。
今まで日の目を見る事が出来なかった人も、この機会に売れるようになるかもな。
商品の陳列棚なんかはお金をかければ変えれるけど、ほとんど同じような作りだ。
商品の品質での勝負になる。
オマールさんのように商品に対して真面目に取り組んでいた人には頑張ってほしい。
「ホット商会の会長さんですか‥会長さんよりも副会長さんの方がやり手だって聞きますよ。キリーエ副会長もこのショッピングモールに力を入れてるみたいですから、オマールさんも頑張ってくださいね。」
「もちろんです!ただこの店はしばらくしたら、従業員に任せるつもりです。私はポーション作りがメインなので、此方に作業場を借りて作成するつもりです。セイルズに戻る時間がもったいないですからね!」
そうだな。
ここで実績をあげたら、嫁子供呼んでここで暮らすのもいいのかもしれないな。
「ああ。頑張ってくださいね。」
「はい!ありがとうございます!いつも愚痴聞かせてすみません。でもマルコイさんに話聞いてもらうと、何故か物事が上手くいくんですよ!なんでしょうね。今ならマルコイさんがどこか宗教の方だったとしたら、その宗教に入ってしまいそうですよ!」
ほう。
貴方も入りますか?
タルタル教‥
「冗談じゃない。そんな宗教なんてやってませんよ。たまたま偶然が重なっただけです。俺みたいな冒険者が宗教なんて出来ませんって。」
「そうですよね。ははは。変な事言ってすみません。」
ふっ‥
俺はやってないんです。
勝手に突っ走ってる人がいるだけで‥
「それじゃあ頑張ってくださいね。」
「はい!ありがとうございます!店が開店したら、是非寄って下さい!」
「そうですね。楽しみにしていますよ。」
俺はオマールさんと別れ、しばらく建築中のモール内を見て回った。
武具や洋服などは、実際商品が並んでからじゃないと看板だけでは、どんな店になるのか想像するのが難しいな。
そんな風に様々な看板を見ながら歩いていると、突然目に入った看板に驚愕する。
そ、そんなバカな‥
あ、あれはまだ此方には入ってきていないはずだっ!
見間違いかと思い、目を擦り看板を注視する‥
俺は網膜に映る文字を否定したいが、現実としてその文字は目を擦ったところで変わる事はなかった‥
頭では拒否するが、その目に写った文字は俺の中に入り込んでくる‥
『タルタル教 アースン支部』
俺はその場で膝から崩れ落ちる。
そんなはずはない‥
まだヤツはセイルズにいて、ロンギル共和国で布教しているはずだ‥
ならば何故、ここにこの看板があるのだ‥?
その看板は店の上部に掲げてあり、店の横には別の看板があった。
そこには『セイルズ名物!チキン南蛮!なんとドラゴン肉より美味しいよっ!』と書いてある。
間違いなくあの組織の手の者だ。
俺は周りを見渡してヤツを探す。
ロンギルは広い。
いくらヤツでもこの短期間でロンギル全土に布教する事なんてできるはずがない。
そして、俺はヤツによく似た人物を発見する。
彼女はヤツと似た雰囲気を持っていた。
しかしヤツよりも見た目が少し幼い。
「こんにちは!どうされました?」
しまった。
話しかけられてしまった‥
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