第377話

サントバルの身体が血に覆われた。


ただ通常の鎧とは違い、関節部分が厚く覆われている。


一瞬あれでは動きが阻害されるのではと思ったが、元々血は液体だ。

動きにくいなどと考えない方がいいだろう。


それに普通であれば関節部位を攻撃するのだが、それが出来ないと考えた方がよさそうだ。


頭まで血で覆われたサントバルの口の部分が開く。


開いた部分から血が滴り、落ちた血は顎の部分に吸収されている。


「死ね。」


そう言い放つとサントバルは此方に向かってきた。


スピードは速い。

しかし避けれない速さではない。


剣を縦に振ってきた。

横に動き直線的な攻撃を躱す。


すると避けるのを見計らったように剣を振った体勢のままサントバルは蹴りを放ってきた。


こんな体勢での蹴りだ。

牽制に過ぎないと思いはしたが、念のために剣で受ける。


もの凄い衝撃が身体を走る。

剣を持った手が痺れる。


その場から軽く飛ばされた。


あの体勢からの蹴りにどれだけの力が籠っていたんだ?


すぐにサントバルが追撃を仕掛けてきた。


今度は斜めに斬りつけてきた。

蹴りを警戒しながら剣を躱す‥


すると剣は途中で動きを止め、逆方向に斬りつけてきた。


そんな動きができるはずがない!


そんな事をしたら関節が耐えられずに壊れてしまうはず‥


もしかしてあの関節部分がその動きをさせているのか?


剣を体勢を低くしてなんとか躱す。


サントバルはその体勢から片手を剣から離し上から拳を打ち下ろしてきた。


更に攻撃をしてくる可能性を考えていたため、身体を横にずらして起き上がるように拳をかわ‥


激しい痛みが身体に走る!


何が起こった?


腹部が熱い!


身体が衝撃で後方に飛ばされている。




痛みの場所を確認する。

どうやら腹部に大きな衝撃を受けたようだ‥


状況を判断しようと痛みを我慢しながら地面に着地する。

しかし上手く足が動かずに膝をつく。


その場からサントバルを見る。


サントバルの腕が、関節が逆方向に向いている。



なんだあれは‥?



サントバルの腕は明らかに通常曲がる向きとは逆に曲がっている。


「かはっ!」


口の中に鉄の味がする物が込み上げてきて咳き込む。


「お前はどこまで回復できる?そのダメージも回復できるのか?まあたとえ回復したとしても何度でも何度でも魔力が切れるまで痛めつけてやる。そして回復出来なくなってそのまま死ぬがいい。」


すぐにエンチャント:活水で回復を図る。

しかしダメージが大きい。

すぐに動けるまでには回復しない!


俺が膝をついたままでいるのを見てサントバルの口が開き笑みを浮かべているように見える。


にちゃっという音がここまで聞こえて来る。


「なんだ。すぐには回復できないのか。ならたたみ込んだら殺せるな。」


サントバルの腕は元に戻っている。

だが、見た目が戻っているだけで中身はボロボロになっているはずだ。


先程の攻撃もそうだが、蹴りの威力についても原因がわかった‥


サントバルは自身の攻撃の時に【血流操作】で鎧化している血を動かしてるんだな。


ならば不安定な状態からの蹴りの威力も、先程の関節の可動域を度外視した腕の動きも納得できる。


まるで自分の身体を外から操っているような感じだな‥


だが関節の可動域を無視して攻撃してくるのであればはっきり言って動きの予想が立たない。


【予測変換】でもおそらく今の動きに対応する事はできないだろう。

動きに対する俺の認識がついていけていない。

こんな攻撃してくるだろうといった予想自体が立てれないのだ。


油断した。

ここまでの強さとは思っていなかった。

相手の強さを見誤ったな。


サントバルは俺の状態を確認しているようだ。

用心深い事だ。

だがおかげで多少は動けるまでは回復したようだ。


負けるわけにはいかない。

仲間を守るためにも‥

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