第366話

アキーエの拳が地竜の腹に刺さり、そのまま爆発した。


地竜が怯んだ隙についでに数発入れている。

しかし地竜は外皮が硬いようでダメージがそこまで通っていないようだ。

ならばとアキーエは浸透系の攻撃に切り替えるようだ。

先程の撲殺拳とは違い少し溜める時間がいる。

地竜は近くにいるアキーエを振り払おうと尻尾や手足を使うがミミウがアキーエの前に立ち攻撃を盾で流す。


そして地竜の態勢がまた崩れる。


「お前達も攻撃しろっ!」


サントバルが慌てて攻撃させるがもう遅い。


そして地竜にアキーエの拳がゆっくりと当たる。


「魔気一閃!」


アキーエの中で魔力と気功が混ざり合った物が地竜の身体に流れ込む。


それはいつ破裂してもおかしくない不安定な状態で地竜の身体の中に入り、そして爆発した。


地竜の身体が跳ねた。


痛みのためか地竜が咆哮を上げる。


地竜は絶命まではしなかったようだが、痛みに悶え苦しんでいる。


「な、なんだそれは?地竜だぞ!並の攻撃など全く通らない地竜に一撃であれほどのダメージを与えるだと?」


不完全な時でさえ高い防御力を誇ったリュウトゥングにダメージを与えたんだ。


スキル【魔闘士】を発現してから完成したアキーエの技ならばどれだけ高い防御力を持っていようが関係ない。

中身を壊す技だからな。


サントバルが指示した他のドラゴンも攻撃を仕掛けてきた。


よし。

それじゃあ俺も‥


ふと横を見ると不自然な動きをしている奴がいる。


アレカンドロだ。

アレカンドロは腕を大きく回してクロスさせる。

そして‥

「変身!『着装!』」


あ、その鎧の着け方やめなさいって言うの忘れてた。


クワイスたちが見ているので、俺はアレカンドロの後ろに手をかざして『スペース』を使う。


空間が歪み、ちょうどその空間から鎧が出てきたように見える。

これで俺のスキルと思うといいけどな。

俺が多数のスキルを持っているというのはクワイスたちもわかっている。


しかし他人にスキルを譲渡出来る事までわかってしまうと大変だからな。


アレカンドロの身体に神々しい鎧が着装されていく。


そして手に大斧を持った戦女神が発現した。



「マルコイ殿!自分は氷竜と戦ってきます!」


「あ、ああ。わかった。あんまり無理するなよ。訓練した通りにすれば問題ないと思うが、必要な時は俺も参戦するからな。」


「承知しました!では‥行って参ります!」


アレカンドロは背中の羽根を使い空を駆ける。



新しい仲間の頼もしい後ろ姿をマルコイは見つめていた。





クワイスたちは宿敵『カッカス』との戦いに備えていた。

そして『カッカス』が目の前に現れた。


「おう。待たせたか?」


「いや、こちらも先程着いたところだ。」


しかしナイコビ商会の代表者まで来ており、本当にモンスターの討伐になりそうな雰囲気であった。


このまま本当に森の中のモンスター退治になるのであれば手を出す事は出来ない。


あとは森の中でちょっかい出して火種作りになるのだろうか?

そうクワイスが思っているとナイコビ商会の代表が突然笑い出した。


マルコイさんが何かしたのだろうか?


そして商会長が後ろを振り向くと、それまで隠れていたのか竜が3匹現れた。


『アウローラ』全盛期の時でさえ1匹の火竜を相手出来るかどうかなのに、火竜よりも強いとされている地竜や氷竜、多頭竜では逃げるしかない。

いや逃げ切れもしないだろう。


クワイスは現状を切り抜ける方法を考えているが条件が悪すぎて答えが出ない。


そこにきて『カッカス』まで動き出した。


全滅必至かと思っていると地竜の攻撃を小さな少女が防いでいるのが目に入る。

あのとんでもない質量の攻撃を盾で防ぐ?


そして硬い鱗で攻撃を弾くはずの地竜に、赤い髪の女性の攻撃が突き刺さり、あの地竜が悶えて苦しんでいる‥


「変身!『着装!』」


そして見知った声がする方向に顔を向けると、長年一緒に戦って来た女性がいた。


その女性は『アウローラ』で共に戦っていた戦友の娘だった。

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