第350話

確かにスキルとしては強力な物だろう。

しかし俺は違和感を感じたため様子を見させてもらった。


魔族は俺を攻撃する時にどちらかでしか攻撃していない。

そう。

浮遊する短剣か、直接攻撃する短剣か‥だ。


最初に攻撃してきた時は俺と剣での押し合いをしていた時に後ろから短剣が飛んできた。


しかしそれは手に持つ短剣を押していただけで扱っていたとはいえない。


それに俺が力を抜いた時に前方にふらついてきた。

力を入れているだけで他に気が回っていなかった証拠だろう。


それに宙に浮く短剣で攻撃している時に自分の身に危険が迫れば集中力が低下して、宙に浮いている短剣が地面に落ちてしまう始末。


この魔族‥


明らかにスキルの練度不足だ。


同時に扱う事ができて初めて強力なスキルだと思う。


どちらかしか扱えないのであれば1対1の延長に過ぎない。


「くそっ!次は外さんぞ!」


いや、お前に次はない。


「そうか。でもなお前の攻撃は俺には当たらない。そろそろこっちの番だ。俺もお前がこの街を荒らした事、そして俺の仲間であるキリーエを狙ったやつの一味だと思うとはらわた煮え繰り返る思いだからな。」


俺はエンチャントを全属性発動させる。

そして魔族に対する特効を持つエンチャント:光を発動させる。


「お、お前なんだそれは!?光属性?そんなバカな!光属性は勇者しか‥そうかお前は獣人国にいた冒険者かっ!」


明らかに狼狽する魔族。


「そう言う事だ。お前ら魔族は自分たちを脅かす存在がいるのに、情報の共有がされてないんだな?俺としては助かるけどな。」


「くそっ!そんなのがなぜロンギルにいるんだ?」


なんで?

そんなものお前らがキリーエ狙ったのが原因だろうが!


「く、くそ!ふざけるな!そんなもの虚仮威しに決まっている!」


そう言いながら魔族の足は少しずつ後退している。


お前には勿体ないけど、この家のもう一つの罠を見せてやろう。


時空魔法で転移を使えるようになったが、すぐに発動する事はできずに転移ポイントを設置しないと転移できなかった。

そのため戦闘中に転移を使い相手の背後に移動するなんて使い方は出来なかった。


しかし‥


転移罠を作ってる時に気づいたのだが、あらかじめ設置しておけば場所は限定されるが戦闘中に転移して相手に「なっ!いつの間に背後にっ!」なんて事を言わせることができるんじゃないかと。


つまり何が言いたいかと言うと‥


今魔族がいる辺りの後ろに転移ポイントがあるのだ。


魔力を込めて転移を行う。

視界が一瞬暗転し、切り替わる。


俺の目の前には魔族がいる。


俺の存在に気づいて慌てて後ろを振り返る魔族。


「なっ!いつの間に背後にっ!」


俺は振り返った魔族に光属性の剣を放つ。


『光天撃!』


俺の放った光属性の攻撃は魔族の身体を大きく斬り裂いた‥






魔族はそのままその場に座り込む。

傷はおそらく致命傷だ。

助かる事はないだろう。


「くそっ。なんで俺がこんな目に‥」


「お前が無抵抗な人を何人も殺したからだ。因果応報ってやつだな。」


「ふ、ふざけるな。俺のように魔族として選ばれた命と下等な奴らの命を一緒にするなっ!」


「命は平等だ。」


「ちっ。まあお前も四死天に狙われているはずだ。すぐにこっちにくるだろ。先に行って待っててやるよ。」


「四死天?」


「とぼけるな。お前が四死天の1人であるガルヘアを倒したのだろう。」


「ああそうだな。ガルヘアを倒したのは俺だ。」


「なら俺じゃなくもっと強いやつがお前を狙うはずだ。お前のような勇者擬きは太刀打ちできないような相手がな‥」


魔族はそこまで言うと事切れたようだった。


「俺たちに手を出してくるようなら、そいつらもちゃんとお前の元に送ってやるよ。」


マルコイは魔族を見送った後アキーエたちの元に駆け出した。


本当に四天王とかいるんだな‥

あとその上に三傑とかいたりしないよな‥


そんな事を考えながら‥

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