第341話

サントバルが室内で事務処理をしていると、扉が乱暴に開く。

扉の奥からフードを被った者達が現れた。


「やっと来たか。」


そうサントバルが告げると2人組はサントバルに近づいてきた。


「ふん。困ってから泣きついて来た奴が囀るな。」


「ふっ。泣きついてはないが、困っているのは事実だな。俺が動けば解決するのだろうが、世間の目があるからな。せっかくここまで築き上げたんだ壊したくない。」


「そうだろうな。ここまで築き上げた事は評価されている。だからこそ俺達が派遣されたんだ。お前はこのままこの国を支配するために動けばいい。障害は俺達が潰すように命じられたんだからな。」


サントバルの口角が上がる。


「対象はマルコイというホット商会の会長だ。今はセイルズに滞在しているはずだ。セイルズでの居場所についてはセイルズの『カッカス』の拠点を訪ねてくれ。」


「わかった。それじゃあ帰りにもう一度寄らせてもらう。」


フードの人物は買い物にでも行くようにサントバルに告げた。


「ああ。」


「そういえばあのデカイのはどうした?」


「ダンバルか?今は別の仕事を頼んでいる。」


「そうか。てっきり死んだかと思っていたがまだ生きてるとはな。今回は長持ちしそうか?」


「さあな。まあビジネスパートナーだ。大事にしているから問題ない。」


「はっ!よく言う。それじゃあな。」


フードの人物はそのまま扉から出て行った。


サントバルは何事もなかったように事務処理を続ける。


その表情はこれで全てが解決すると思ったのか笑みを浮かべていた‥






「今見てもらったようにアポーツで他の街の人間とやりとりして情報をもらってたんだ。まあ水晶がないとやりとり出来ないし、一方通行だけどな。それとレベルの問題だろうが、2箇所しか置けないって問題もある。」


「それでも遠距離からの情報をすぐにもらえるなんて有用なスキルだよ。」


「確かにな。そのおかげでギルドマスターなんて大任を任せられたんだけどな。」


他の国との戦いとかあったら絶対に召集されるスキルだけど。

だからこそ冒険者ギルドもギルドマスターって役職与えてスキャンを守ろうとしたのかもしれないな。


「ところでスキャン。今ナーメルの街はどんな感じだ?」


時空魔法の興奮も収まってきたので、聞いておきたい事を聞いてみた。


「そうだな。今のところそこまで大きな問題は見られていないけど、やはりナーメルの街にホット商会の店がない事は住民は気づいてるな。まあ俺が指示して噂を流して気づかせたんだけどな。」


お?

やるね。

さすがギルドマスター。

暗躍してますな。


「でもそのおかげでセイルズや近くの街にホット商会の食べ物を食べに来たり、買い物に来たりする人が増えてきてるのは事実だ。今は大きくないが不満の声が徐々に上がり始めている。」


ふむ。

少しずつだが『カッカス』の炙り出し作戦が功を奏してきているな。


「スキャンさん。報告は終わった?」


声の方を見ると‥


ライリーが立っていた。


何かいつもと様子が違うな‥


あ、少し可愛らしい感じになってる。


薄茶色の短めの髪は変わらないが、ちゃんと櫛を通してサラサラになっている。

短めのズボンはそのままだけど、上に着ているブラウスは少しヒラヒラしたフリルがついている。


この間までは少年にしか見えなかったけど、今は少し背伸びした女の子みたいだな。


「はっは!マルコイさんに男って言われてから気にし出してな。最近ちょっと女性らしい格好をする様になったんだよ!」


スキャンは笑い転げている。


「そ、そんな事ない!もともと僕は女らしかったんだ!マルコイの見る目がなかっただけだ!」


「そうだな。今はちゃんと女の子っぽく見えるぞ。」


「ど、ど、どこが女の子だ!僕は立派なレディだ!」


「ひーひっひっひ!」


スキャンは腹を抱えて転げ回っている。

相変わらずコイツは笑い上戸だな。


う〜む。

しかしどこからどう見ても背伸びしている女の子にしか見えん‥


「もういいっ!スキャンさん僕先に行ってるからね!」


「ぶふうっ!す、すまないなマルコイさん。それじゃあ俺も戻るよ。ギターありがとうな。それとこれはスキルで得た情報じゃないんだけど‥」


なんだ?

まだ何かあるのか?

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