第307話

「何を言うんだ!こんなに可愛い女の子のどこが男だって言うんだ!」


俺はまじまじとライリーを見る。


「ほらスラリとした足。可愛らしい顔。僕みたいな可憐な女の子なかなかいないよ!」


う〜む、これが僕っ子というやつか。

スキル【異世界の知識】は模倣した人物の知識を得るものだ。


この僕っ子ってやつの知識がしっかりあるって事は誰かが好きなキャラだったんだろうな‥


てか俺が模倣した知識の中で好きそうなのは正人しかいないんだけどな。

今度会ったら教えてやろう。


しかし‥


「そんな格好して女の子だと言ってもな‥それにその真っ平らな胸板を見たら10人中10人が男だと思うぞ。」


「なっ!スケベ!どこ見てんのさ!それにちょっとはあるし、まだ発育中だからこれからもっと大きくなるんだもん!」


確かに愛くるしい顔をしているし、女性らしい格好をしたら可愛くなるんだろうけど、胸は手遅れのような気がするぞ。


「ひーひー‥ぶはっ!あっはっは‥ふぅふぅ。まあそう言ってやらないでくれ。ライリーは狙われるようになってから特に男っぽい格好をするようになったんだ。もともとはもう少し女の子っぽかったんだよ。ぶふほぉっ!」


スキャンはツボにハマったようでまだ地面を転げ回っている。


しばらく経つとようやく地面に座りまた話し出した。


「あ〜、腹いて。すまなかったな。でもライリーの件もあって本当に信頼できる人じゃないと動けなかったのは事実だ。だからあんな試すような事をした。本当に申し訳ないと思っている。」


「わかった。さっきも言ったが謝罪は受け取った。俺はあんたたちの期待に添えるかわからないが、仲間が狙われているんだ。『カッカス』を潰したいと思っている。でもこちらは4人しかいないからな。どこまでやれるかわからないから任せとけとは言えなけどな。」


「すまないな。俺も昔のツテから今度『カッカス』の情報を貰うようにしている。何か変わった事や人数なんかがわかれば伝えよう。それにさっき見せてくれた力があれば『カッカス』相手にも十分戦えると思うからな。」


「ん?さっきの模擬戦は全力じゃないぞ。まだ十分の一くらいだぞ。」


そう伝えるとスキャンの顔が縦に伸びた。

ふむ。

こいつもよく見ると面白い顔だな。

ロンギルは愉快な顔の持ち主が多いようだ。


「さっきの模擬戦って全力じゃないのか?」


「ああ。あんたの構えや重心の掛け方なんかでそこまでする必要はないと思ったからな。」


「そ、そう言えばさっき闘技会で優勝したとか言ってなかったか?」


「言ったぞ。今年あった闘技会で一応優勝したからな。」


「お、おまえの名前って‥」


「あ?さっきも言ったがマルコイだ。」


「た、確かに今年の闘技会の優勝者はマルコイって名前だった気がする‥」


顔がだんだん伸びてるぞ。


「な、なるほど。俺の記憶だとSランク冒険者にマルコイって名前はなかったはず。そ、それじゃあ、こ、今年はSランクが出てなかったとか‥?」


「いやSランクもいたぞ。運もあって何とか勝てたって感じだったがな。」


「はあ?!お、おまえSランクにも勝ったのか?」


う〜む。


「すまないが、イザベラさんの手紙はなんて書いてあったんだ?」


「あ、ああ。イザベラの手紙にはロンギルにも出店しているホット商会の頭がナイコビ商会に狙われてるって。その仲間がそっちに行って直接話し合いをしたいと言ってるから手を貸してやってくれって書いてあったぞ。」


イザベラさん‥

話し合いって言っても拳を使った話し合いだから、その辺も書いてくれないと‥

それに俺のこと書いてないのね。

わざとじゃないだろうな‥


「わかった。イザベラさんはだいぶ省略して書いてるみたいだな。話し合いしても解決するとは思えないから、裏が取れたらぶっ潰すつもりできたんだ。悪いが、何か有用な情報があれば教えてほしい。俺は『ツバメの憩い場』って宿に泊まっているから教えてほしい。」


スキャンは真面目な顔に戻り深く頷いた。

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