第291話
「別にナイコビ商会に呼ばれて行ってるわけではないですよ。ちょっと用事があるだけです。」
俺がそう告げると、オーマルが大きく目を見開く。
「本当ですかっ!ああ、すいません。それでしたらぜひうちの商会に寄ってもらえませんでしょうか!」
ナイコビ商会に用事がといった段階でナイコビ商会の関係者なら進んで話をしてくるはず。
それにもし俺の顔やキリーエの顔を知っているなら警戒して話しかけはしてこないだろう。
ナイコビ商会と争ってる商会か‥
とりあえず寄ってみてもいいかもな。
何か情報も得られるかもしれないし。
「そうですね。特に急いでナイコビ商会に行くわけではないのでそこまで言われるなら時間があれば少しお邪魔するかもしれません。」
「ああ!本当ですかっ!よかった!ああすいません!」
本当に寄っていいのかな?
少し心配になってきたぞ‥
「私のやっている商会はロカット商会と言いまして船が到着する予定の港町セイルズに店を構えています。それほど大きな商会ではないんのですけど父から引き継いだ大事な商会です‥ああすいません。」
オーマルは懐から自分のギルドカードを取り出す。
オーマル
商人ランクC
スキル【薬術士Lv.6】
へえ【薬術士】か。
初めてみたな。
「すいません、【薬術士】っていうのは?」
「ああ【薬術士】はポーションのランクがわかったり、ポーションを作れたり、薬草や毒草の種類がわかったりします。色々とできるのですが、専門には敵わないので器用貧乏といったところですね。」
「へえ。錬金術師が作るポーションとは何か違うんですか?」
「そうですね。ポーションの中身自体は変わりません。ですが【薬術士】はポーション作りに特化してます。魔道具を作ったりすることが出来ませんけど、かかる時間や種類が大幅に変わります。」
おお凄いドヤ顔だ。
器用貧乏とか言いながら、自分のスキルに自信を持ってるのがわかるな。
「ああすいません。でも物作りのスキルなので、商会の会長らしいスキルではありません。だから中々お店を大きくしたりはできてないんですよ。」
「いえ、素晴らしいスキルと思いますよ。」
するとオーマルは笑みを浮かべる。
「はいありがとうございます。」
(ピコーンッ)
『模倣スキルを発現しました。スキル【薬術士】を模倣しました』
よし。
スキルを模倣できた。
【薬術士】か‥
珍しいスキルが模倣できたな。
「わかりました。向こうに着いたら会うつもりの人がいるのでそれが終わったらお邪魔するかもしれません。その時はよろしくお願いします。」
「ああよかった!それだけで今回他国を巡った甲斐があります!だいたいうちの商会が小さいからって人を集めてこいって言うのが無茶苦茶なんだ‥お金だけ渡して誰が来るっていうんだまったく‥人と人の繋がりは信頼関係だっていうのに‥そこがわかってない人が商会の頭をしてるなんて‥ああすいませんすいません。」
う〜ん。
なんか苦労してるのが感じられるなぁ‥
「私の商会は主にポーションなどを取り扱っています。と言っても下請けなのでポーションを仕入れて他の商会に売るといった商いになります。ですが直接個別でお売りする事もできるので、ぜひお寄りください!ああすいません。それではあんまり長居するのもご迷惑なので、お暇します。では是非よろしくお願いします。すいませんそれでは。」
なんか濃い人だったな‥
でも俺を騙そうといった感じはしなかったしな。
それに人との繋がりがお金じゃなくて信頼って言ってた事にも好感は持てたかな。
それにポーションか‥
キリーエに任せっぱなしだったから自分で見てみるのも面白いかもしれない。
模倣スキルだからレベルは1だけど、何か作れるかもしれないからやってみるか。
何かと統合してスキルになるといいんだけどな‥
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