第289話

海上からクラーケンに近づく。


こちらにはまだ気づいてないようだ。


ゆっくりと気付かれないように近づいていると突然クラーケンの目の前に海水で作られた槍のようなものが浮かび上がる。


魔法を使うつもりか!


発動が早く間に合わない!


船にむかって海水でできた槍が放たれる。


海水の槍は船に向かって一直線に進む。

そしてそのまま船に直撃する。


しかし船に当たったはずの海水の槍は軌道を変えてそのまま上空へ飛んでいった。


船の甲板には大きな盾を持った小さな娘がいる。


流石ミミウ。

一応お願いしてきたが、このサイズのモンスターの攻撃を防げるか心配だったけど杞憂だったようだ。


クラーケンは魔法が通じなかったのを見て暴れている。

そして船に向かってまた進み出した。


餌のくせに!とか思ってんのかね。


まだ船の事を諦めていないようなので攻撃してこちらに気をひかせるか。



海上を駆け海から出ている足のようなものに斬りつける。

思いの外柔らかくて簡単に傷が入る。


クラーケンがこちらに気づいたようだ。

しかし一瞥した後にまた船に向かおうとする。


とるに足らないと思ったのか?

それじゃあもう少し攻撃してやるか。


エンチャント:火を使い先程とは違う足に斬りつける。

今度は5分の1程切れたようだ。


流石に痛かったのかクラーケンは此方に向き直る。


そして4本の足を使い攻撃を仕掛けてくる。


足場が無いと避ける事も出来ない攻撃だが、今の俺には空間魔法がある。


海上の上に作った空気の足場で4本の攻撃も問題なく躱す。


そして先程5分の1程切った足を『強撃』も使い何度も斬りつける。

複数回斬りつけたところで足が海上に落ちる。

ふぅ、やっと切れたか。

このサイズのモンスターだと足一本でも切るに労力がいるな。


クラーケンを見ると足が切られた事に腹をたてているようだ。


おうおう。

暴れる暴れる。


足一本が俺の身体の何倍もある。


切った足をとりあえず『スペース』の中に放り込む。


もし食べれたら、一本でミミウが食べる1日分くらいにはなるかもしれないしな。


クラーケンが俺から距離をとる。

俺を敵として認識したのか、頭を出して此方を見ている。

するとクラーケンがいる辺りから波が形成されて此方に迫ってくる。

スキル【海流操作】か?


飲み込まれたらひとたまりもないだろう。


しかし残念ながら俺には通じない。


階段を登るように空中を駆け上がり津波が届かない範囲まで来ると上から飛び降りて海面から出ているクラーケンの頭に向かって剣を振り下ろす!


俺の振り下ろした剣はクラーケンの頭を直撃して軽くない傷をつける。

痛みのためかのたうち回るクラーケンに向けて全エンチャントを解放してエンチャント:雷を発現させる。


前傾姿勢になり足に力を入れる。

そして駆け抜けるようにクラーケンに向かい剣を振るう。


『紫電剣閃』


俺がクラーケンの横を駆け抜けた後、クラーケンは頭部の一部分を斬り裂かれた状態で海に浮かんでいた‥


頭が弱点だったのか一部分斬り裂いただけで倒せたようだ。


あれで死ななかったら本当に逃げ回って船が逃げる時間を稼ぐ必要があったからな。


戦えはするが、空間魔法とエンチャントを使いながらだといくら魔力量が多いとはいえ魔力切れにならないか不安になるからな。


死んだのを確認して『スペース』に入るかやってみる。


おお!

スムーズに入った。

でもこれで俺の『スペース』の中はいっぱいいっぱいじゃないかな。

空間魔法のレベルが上がったら空間も広くなるといいけど‥




俺は海上を駆けて船に戻る。


すると大きな歓声が上がる。


「助かったありがとう!」「すごかった!一生恩にきる!」「君は命の恩人だ!」



少し気恥ずかしかった俺は軽く頭を下げて仲間のもとに戻る。


「お疲れ様。」


アキーエがそう声をかけてくれた。

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