第273話

家の中は整理整頓がされてあるのもあるが、もともと物が少ないためかすっきりとした印象だった。


「そこに座るがいい。アキーエちゃんもミミウちゃんも久しぶりだな。ん?この子は新しく仲間になった子か?」


マージスがキリーエを見ながら問いかける。


「はい。キリーエと言います。マルコイさんとは王都からご一緒させてもろてます。」


「おおそうか。愚息だが迷惑はかけていないだろうか?すまないがこれからも宜しく頼む。」


マージスがこんなに人と話しているのは初めて見るかもしれない。

いつも何かを考えているような人だったからな。


「みんな紅茶でいいかね?おーい、母さん。紅茶を5つお願いするよ。」


すると家の奥の方から声が聞こえる。


「はーい。」


しばらくすると奥から1人の女性が紅茶を持ってやってくる。


「マルコイ久しぶりだね!」


女性にしては大きめの身長をしている。

長い金髪を一つに結んで背中に垂らしている。

年齢は30後半くらいになるはずだ。

大きな目は少し垂れているが、それが年齢よりも若く可愛らしく見せている。

ライリー・アンバーエスト

俺の母さんだ。


「久しぶり母さん。」


母さんは昔冒険者をやっていたそうで、はっきりと言ってマージスより強そうだ。


「マルコイよ。せっかく戻ってきたのだ。お前が闘技会で活躍した時の事を教えてもらえぬか?」


「それよりもマージス男爵。村のこの有様は何ですか?」


「ん?この有様?おお、そんなものお前を名前を使って村おこしをしてるに決まってるじゃないか。」


「決まってるじゃないか、ではなくて本人の許可なしでこんな事していいと思ってるんですか?」


「ダメだったか?しかしなぁ‥俺も金儲けがしたくて自分の息子で村おこしをした訳じゃないぞ。」


それは‥

なんとなかわかる。

この家を見れば金儲けのためじゃないんだろうなとは感じる。


「この村は農業しかやってきておらず、お前のように村で農業をするわけでもなく冒険者や街に仕事に行くやつが増えて衰退する一方だった。俺もずっとその事で頭を悩ましていたんだ‥お前がスキル【模倣】だったか?それを発現した時も何か村の為になるんじゃないかと期待したものだ。しかしそれもダメだった。」


なるほど。

昔この人はずっと難しい顔をしていた。

それはこの村の行く末を考えていたからだったのか‥


「お前達の父親ではあるが、俺はこの村を治める男爵でもあるのだ。だからお前達家族の功績は遠慮なく使わせてもらう。まあお前が闘技会で優勝したと聞いて何かこの村のためにとならないかと思っていたが、ヒントをくれたのはアルサンだがな。」


なるほど。

アルサン・アンバーエスト。

アンバーエスト家の長男で男爵を、この村を治める事になる俺の兄だ。


「アルサンがこの村をもっと人が呼べる村にしようと色々考えてくれたのだ。」


悪の黒幕は兄だったか‥

しかしただ金儲けが目的じゃなかったとしたらやめろとは言い難いな‥


俺はどうにかならないものかとキリーエを見る。


するとキリーエは頷いて話し出す。


「マージス男爵。少しよろしいでしょうか。うちはこの村の出身ではないのですが、ちょっとした商会をマルコイさんとやらせてもらってます。流石にここまでマルコイさん推しだとマルコイさんも恥ずかしいと思います。でも村おこしの為なんであればやめてくださいとは一概に言えないかなと。なのでよかったらこの村の商品や売り出したかたにちょっと協力させてもろてもいいでしょうか?」


するの怪訝な表情を見せるマージス。


「マルコイが商会?お前に商才があるとは思えんが‥」


「俺が意見を言ってキリーエがそれを形に、商品にしてくれてます。ホット商会って聞いたことありませんか?」


「ホット商会!聞いたことあるも何も今王都で1番勢いがある商会ではないか。まさか‥?」


「はい。うちらのパーティでやってる商会になります。だからちょっとだけ話させてもらえませんか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る