第270話
「そういやお前はどうしてロンギルに行ってるんだ?何か用事があるのか?」
う〜ん、なんて説明するべきか‥
キリーエが狙われてるって言うと心配するだろうな。
キリーエも実家ではその話をしてなかった。
俺は頼んでいたお酒を口にしながら考える。
俺が頼んだのはブランデーと呼ばれる物だ。
酒精は強いが、香りが良い。
ゆっくりと口の中で香りと味を楽しみながら飲みこむ。
「そうだな。俺が闘技会で優勝してから模擬戦を挑んでくるやつが物凄く増えてな。その中でもロンギルの傭兵団が多く来てたんだ。」
「ロンギルの傭兵団か。あそこは騎士団とか決まった戦力は持ってないからな。傭兵団を金で雇うってとこなんだが‥確かに闘技会優勝者を倒したとなると依頼はひっきりなしになるだろうな。」
実際1人それが目的かわからんけど、変な奴が来たしな。
「あんまり鬱陶しいんで、直接ロンギルの傭兵団に乗り込んで決闘という話し合いをしてこようと思ってな。」
「そんなに来たのか?」
「ああ。酷いやつは1人で3回くらい来たぞ。その後も1日数人から数十人来やがった。あんまりしつこいからこっちから行ってやろうと思ってな。まあ強いやつと闘えると思うから訓練も兼ねてだが。」
「そうか‥お前はどんどん強くなるなぁ。そのうちSランクとかなるかもな。」
「はは。任せとけ。そしたら時間がある時に俺も遺跡巡りして、おっさんが美女に変身するような国宝級の魔道具見つけてきてやるよ。」
「そんなのいらないよっ!おじさんはこのままで人気者だからね!‥‥‥でももし本当に見つけたらちょっとだけ使わせてな。」
「うん。気持ち悪いからやめとく。」
「酷いっ!」
そんな話をしながらバーントさんとのお酒を楽しんだ。
次の日、王都を昼前に出発する事にした。
朝はバーントさんが忙しくて見送りに行けないから昼前にしてくれと言っていたからだ。
別に帰りも寄るから見送りはしなくていいと言ったが、見送りたいと駄々をこねるので仕方なく昼前にした。
おっさんが駄々をこねても可愛くないのだが、鬱陶しいから承諾した。
王都の門が見えてきた時にキラリと光るものが見えた。
門に近づいていくと光の正体がわかった。
おお!
会いたかったが、冒険者だしどこにいるかわからず諦めていた人とも再会できたようだ。
日の光を受けて光を放つその人はガッツォさんだった。
「ガッツォさん久しぶり!」
「おお!マルコイ久しぶりだな。お前が来ていると聞いたが、もう出発すると聞いたから見送りだけ来たぞ。」
「ガッツォさん元気そうでよかった。ガッツォさんは今も冒険者を?」
「ああ。マルコイのような活躍はしていないが、まだ現役でやらしてもらってるぞ。」
「マルコイ。元々お節介だったガッツォは今初心者冒険者を助けてやるのに奔走してるんだ。自分のパーティで出来るだけ多くの冒険者を救ってくれてる。それでも冒険者の死亡率が上がってはいるが、ガッツォのおかげでかなりの冒険者が助かっているのも事実だ。今では冒険者ギルドになくてはならない存在だぞ。」
「おいおいバーントさん。持ち上げ過ぎだぞ。俺は自分の手の届く範囲でできる事をやってるだけだ。」
くぅーっ!
やっぱりガッツォさんはいい男だなぁ。
思ってても出来る人と出来ない人がいる。
出来る力を持っていてもやらない人もいる。
そんな中、ガッツォさんは自分で出来る事を出来る範囲であるがやっていると言う。
それがどれだけ凄い事なのか。
本人は自慢する事なく当たり前のようにやっているのだ。
「ガッツォさん。俺はまだまだ冒険者として強くなる。だからガッツォさんもしばらくは現役でいてくれよ。」
「おう!マルコイみたいな奴がいる限りは現役でいるぞ。任せとけ!」
そして俺たちは2人と別れて旅を再開した。
離れても眩しいガッツォさんを見ながら。
しかしガッツォさんの顔で助けに来たら、俺だったら逃げるなぁ‥
だって顔山賊だもん。
さてさて次の目的地はカーロッタだ。
何もないといいなぁ‥
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