第210話

冒険者や騎士団が街に戻ると、街の人たちから盛大に歓喜の声が上がった。


自分たちが生活している場がモンスターの脅威に晒されたのだ。

それを守り切った人たちに対する感謝は多大なるものだろう。


俺たちは一旦冒険者ギルドに向かう事にした。

討伐の報告はサブマスターからあるだろうが、俺が気づいた事を伝えておこうと思ったからだ。


ギルドに到着して中に入ると慌ただしかったギルド内の人たちが一斉にこちらを向く。


え?

何?俺たち何かしたっけ?

あっ!戦場で爆発させまくったのは俺じゃなくてアキーエです‥


俺がそっとアキーエを差し出そうとすると一斉に歓声が上がる。

そしてみんながこちらに駆け寄ってくる。


「おお!パーティ『クリエイト』が帰ってきたぞ!」


「おお帰ってきたか!あんた達の活躍すごかった!この街はあんた達に救われたんだ!」


「あなた達はこの街の英雄よ!」


普段話した事のない冒険者やギルド職員の人たちからものすごい称賛を浴びた。

涙ぐんでる人もいる。


前に王都で緊急依頼を受けた時は大勢の中の1人だった。

だが今回は俺たちの活躍で街が救われたと言ってくれている。


緊急依頼を受けた時は恩のある人や親しい人を守りたいと思って参加した。

結果として街を守る事になった。


ただそれだけだ。

しかしこの街の人たちは自分たちを英雄と言ってくれる。


なんの見返りもなく世界を救った勇者たちはこんな事の積み重ねがあったのかもしれないな。


人に感謝されるのは恥ずかしいが胸の奥が熱くなる‥





「マルコイ‥さっきわたしの事押そうとしなかった‥?」


さすがアキーエさん!

よく見てらっしゃる‥


「ん?な、何の事かなぁ〜‥?」


「後で覚えときなさいよ‥」


流石にこの群がってる人たちの前で問いただしては来ないようだ。

アキーエが大人になってて俺は嬉しいよ。

俺は垂れてくる程まで出ている冷や汗を拭いながらそう思った。


忘れててくれないかなぁ‥


いろんな人たちからの感謝を浴びながらギルドの受付カウンターまで進む。


受付カウンターには狙ったかのようにイザベラさんが座っている。


「マルコイちゃん達お疲れ様。そしてこの街を、この国を守ってくれてありがとう。」


「いや、ここまで感謝されるとは思ってなかったから正直面食らってる。俺たちとしては親しい人たちを守りたかっただけで、この街を救おうとかそこまで殊勝な気持ちで参加した訳じゃなかったからな。」


「ふふ。マルコイちゃん達はそのまま高みに上がって欲しいわね。マルコイちゃん達は闘技会もそうだけど、今回の件で益々有名になったわ。いろんな人がその名を利用しようとしたり、肖ろうとすると思うけど驕らないでそのままでいてね。」


「大丈夫よイザベラさん。マルコイにはわたしたちがついてるもの。」


アキーエがイザベラさんに答える。


「そうね。アキーエちゃんとミミウちゃんがいれば大丈夫ね。しっかりと尻に敷いていてね。」


「し、尻に敷くなんて‥」


かっこよかったのに真っ赤になって俺の後ろに隠れるアキーエ。

可愛いのう‥


でも確かに彼女たちがいて、俺の事を思って話をしたり聞いたりしてくれるから前に進めているのかもしれないな。





斜めに進んでないよな‥?

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