第176話

「おいエッケン‥マルコイはSランクに勝ってしまったぞ‥」


「そのようでございますな‥しかしまさかSランクに勝つとは思いませんでしたな。」


「ところでマルコイに褒賞で用意しとくように頼んだ家は準備できたのか?」


「はい。先日条件に合いそうな物を見つけましたので抑えてあります。しかしこのタイミングですか?」


王は少し考えるような素振りを見せる。

しかしかぶりを振る。


「いや、このままほっとくとすぐに別が取り込もうとするぞ。あの若さでBランクってだけで目をかけるのに、Sランクに勝ってしまったんだ。どの国も取り込もうと必死になる。こっちは面識もあって褒賞を与えるきっかけまであるんだ。早いに越した事はない。」


「確かにその通りですな。すぐに目録をお持ちします。」


「頼んだぞ。マルコイがこっちに居る間に渡すぞ。」


エッケンはすぐにその場を離れ準備を始めた。


「まったく‥とんでもない事をやってくれた物だな。」


王は笑いながらそう呟いた。






俺たちは突然現れた王様に対して膝をついて迎える。


「構わん。普通に座るがよい。突然来たのは此方の都合だ。畏まるな。」


そう言ってくれるとありがたい。

実際さっきの闘いでフラフラなんで膝をついてる姿勢ですら少し辛い。


「王様なんの御用でございましょうか。」


「なに今回の闘いが見事であった事を伝えたかったのと、前回の模擬戦の褒賞が決まったので伝えにきたまでだ。」


「しかし今回の闘い、誠に見事であった!模擬戦の時から高い実力を持っているのはわかっていたが、まさかSランクを倒すとは思わなかったぞ。」


「ありがとうございます。しかしこちらも満身創痍です。あれで決まらなければ私が負けていたと思います。しかし今回は運良く勝つ事ができました。」


「ふむ。謙遜するでない。確かに闘いが終わってからは満身創痍であったが、今は動けそうではないか。それにお主はまだ何か隠しているように思えるしな。」


「それこそ買い被りです。全力で闘いましたから。」


王様は笑みを浮かべながら此方を見ている。


「まあよい。まだお主の試合はあるのだ。楽しみにして観させてもらう。エッケン。」


「はっ!」


「マルコイに褒賞を与えよ。」


「はい。冒険者マルコイよ。此度の模擬戦での褒賞を与える。」


何がもらえるのかな?

お金だといいけどなぁ。

でもお金だったとしても模擬戦したくらいだから、そんなにもらえないと思うけど、自分のお小遣いが増えるのは非常に助かる。


「マルコイよ。お主に土地と家屋を与える。場所については後ほど使いの者が案内するが、今回は目録だけ渡させてもらう。」





は?





家屋と土地?



それって家をくれるって事?



はい?

あんな模擬戦しただけで家をくれるってどんな神経してるんだ?


「い、家ですか?」


「む?何か不満か?安心せよ、お主が鍛治も出来る様に鍛冶場も敷地内に作っておる。」


いやいやそんな事じゃないんですけど‥


仲間たちを確認すると‥


みんな目がキラキラしてる‥


断れる雰囲気じゃないっぽい‥


「謹んでお受けさせて頂きます。」



家‥

もらっちゃった。

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