第160話
「そうね。わたしが技を放ったのと同時にリュストゥングの拳がわたしを撃ち抜いたわ。煙で認識出来なかったはずだから反射的に反撃したんでしょうね。」
なんてやつだ。
あの中で膝をつくほどのダメージを受けたはずなのに反撃するとは。
「まあ魔道具が壊れなかったとしても右手は動かなかったし魔力切れも起こしてたから、あの攻撃で倒せなかったなら勝てなかったわ。」
アキーエはスキルを発現してから魔法使いとして修練してきた。
魔力量はかなりのものだったはず。
その魔力を受けきったなんてやはり化け物だな。
「でも魔力切れの大半は自業自得なんだけど。」
ん?
なんですと?
「どういう事だ?最後の技に全力を込めたから魔力切れを起こしたんじゃないのか?」
「違うわよ。最後に使った技って魔力と気を同時に放つってやつなんだけどわたしの場合ってどうしても魔力が高いからバランス保つのが難しくて。だから魔力が暴走気味になるのよね。それを抑えようと余計に魔力を消費したって事。」
それで魔力切れを起こしたわけか。
確かにリュストゥングも言っていたな。
しかし未完成であの威力なら完成したら物凄いものになるだろう。
「でももう使う事はないわ。わたしのスキルじゃ制御する事ができないもの。」
それを聞き俺は何も言えなかった。
確かに俺は仲間にスキルを渡す事はできる。
しかしそれは模倣したスキルであって、そのスキルのレベル上限は1と決まってるのだ。
だから自ずと出来る事が限られてしまう。
「マルコイ気にしないで。マルコイからスキルを渡してもらわなければ強くなることすら出来なかったんだから。だから感謝こそすれ、それ以上を望む事はないわ。ありがとう。」
ありがとう‥か。
俺のスキルがもっと万能ならこんな思いはさせずにすんだのだろうか‥
「でもアキーエさんかっこよかったですぅ。私も次の試合、アキーエさんみたいに頑張るですぅ。」
ミミウの次の試合はガルヘアが相手だ。
リュストゥングよりも別の意味で危険な相手にならだろう。
そっちに関してはアキーエよりも心配だな。
「アキーエどうする?宿に戻るか?」
「そうね。もう少しだけここにいるわ。マルコイたちは闘技場に戻らなくていいの?」
「そうだな。明日からの連絡なんかがあると思うけど。」
「そしたらそれが終わったらわたしも一緒に戻るわ。」
すると救護場にキリーエが入って来た。
「マルコイさん。明日からの予定発表があるみたい。」
キリーエはそう言ってきた。
「あ、アキーエちゃん気がついたん?すっごいかっこよかったで。Sランクと渡り合える人が仲間なんてウチものすごく嬉しいわ。それにお店がもっと繁盛するわ。」
確かにあれだけ活躍したのだ。
アキーエの看板が飾ってある店はさらに繁盛することだろう。
みんなが笑っている。
アキーエも少し困った顔をしているが満更でもないようだ。
「それじゃ一旦会場に行ってくる。」
「わかったわ。それじゃミミウとキリーエも一緒についていってくれる?マルコイ1人だと心配だから。」
どんだけ俺をお馬鹿さんだと思っているのだ?
俺たちは闘技場に行くためにその場を離れた。
扉を閉めた後に中から少しくぐもった声が聞こえた。
「やっぱり負けちゃったか。慣れるもんじゃないわね。でも‥」
言葉が震えているのがわかった‥
今は1人がいいのかもしれない。
少し時間を置いて戻ろうとマルコイは闘技場に戻るため足を進めた。
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