第129話

「ならば‥そうよな。」


「ならば、お前らのダマスカス商品を全部王家に卸すことはできるか?」


「はい。全部とはいきませんが、一定量を納めさせて頂くことはできます。ただ‥」


「ただなんだ?もうせ。」


「はい。私は冒険者もやっております。その為、この国にずっといるわけではございません。ダマスカス鋼を作りこの国に送る事はできますが、量は少なくなると思います。」


「ふむ。ならばこの国にいて、このワシに仕えるがよい。」


やはり抱え込もうとするか‥

しかしここははっきり断らないといけない。

もしかしたらこの国に居れなくなるかもしれないな‥

その時は皆んなに謝ろう。


「申し訳ありませんが、お断り致します。名を売りどこかに仕える事を目的として冒険者をやっているのではありません。私は‥私たちは冒険者として大成するために冒険者をやっています。そのため、1つの国に仕えるつもりはありません。」


言い切ってしまったな。

流石に不敬罪まではならないと祈りたい。

キリーエを見ると頷いている。

よかった、キリーエも同じ思いの様だ。

キリーエの場合は商人で大成する事だけどな。


「ふむ。ならば最初の案を飲むしかあるまいな。それではホット商会よ。今後はこの国に一定量の武具を納めよ。代金は後ほど宰相と話せ。そして国を出る時は必ず申し出るのだぞ。」


「承知致しました。」


ふぅ、よかった。

何とかなったみたいだな。


「ところで、お前は冒険者をやっているのであれば装備品はダマスカスを使っているのか?」


「はい。自分で作ったものになりますが、それを使っております。」


「なるほど。どれほどの物か見せてみよ。」


俺の装備はダマスカスだけど、ミスリル入りなんだよなぁ‥

思い切って宿に置いて来ましたとか言ってみよっかなぁ‥


「王よ。こちらにございます。」


あ、さっきの執事みたいな人が持って来やがった‥


王様は受け取り、鞘から剣を抜く。

目を見開き、しばらく剣を見つめている。

すると王様がプルプルと震え出した‥





「‥‥‥‥なんじゃこりゃー!」


王様の雄叫びが謁見の間に響き渡る。


「宰相よ!これはミスリル入りのダマスカスだよな?お前買ってきたやつの中にこんなもん入ってなかったじゃねーか!」


「知りませんよ!私が買ってきたやつも冒険者から買い上げたりしたやつなんですから。ホット商会の商品は出たらすぐ売れてしまうから、買うのも一苦労なんですよ?」


「いやそれはわかるけど、こんなんあったら冒険者だったら自慢するだろ。噂とか聞いてないのか!お前に市場調査任せたよな?」


「こんなんありませんでしたよ!あったら真っ先に報告するに決まってるでしょうが!」


「そりゃそうか。しかしお前こんなもん見ちまったら驚くだろう。お前の言う通りにして、ダマスカスの装備品は卸してもらえそうになってたけど、これはお前別格だぞ?」


「確かにそうですな。王の威厳で何とか国に卸してもらえるようにしたら、国の騎士達に使わせて国力アップしようと思ってましたが、これを見てしまうと‥」


2人が突然何かに気付いたようにこちらを見る。


「「あっ!」」


そうだよな。

それって俺が居ないところで話すべき内容だよな‥?

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