第124話
いつものように宿で朝食をとり、今日の予定を決めようとしているとキリーエが突然真剣な顔で話を始めた。
「マルコイさん。ちょっとお願いがあるんやけど。‥」
「どうした?キリーエがお願いなんて珍しいな。」
普段から商売についてはがっついてくるが、それ以外は独自に動いてる事が多く俺にお願いなんてしてくる事は少ない。
あってもインゴットの作製だったり魔道具の件とかだ。
それについてもこんなに真剣な表情をする事はない。
「うちらのホット商会なんやけど、かなり広く商売をやってるやんか?そんで先日大手からお声がかかったんよ。」
ほう。
しかし手広く商売をやってるのはキリーエの商人としての能力だけどな。
しかし大手ね。
キリーエが言うくらいだから、どこかの貴族様とかかな?
「その大手って言うんが王家なんよ。ここの王様は国で1番強い人がなるのが習わしなんやけど、今の王様がホット商会の商品なんかに興味を持ったみたいで‥専属やないんやけど、御用達になってくれないかって‥」
いや、待て。
スケールがでかい。
確かに新進気鋭の商会だろうけど、いきなり王家から声がかかるか?
今までの御用達にしてた商会とかあるだろうし、問題あり過ぎるだろう?
「王様が最初に興味を持ったのはダマスカスの商品みたいなんよ。それからホット商会を調べてたら食品関係も勢いがあるからって。でもおそらくダマスカスの武具を王家におろして欲しいのが本音やと思う。」
そうか。
今はダマスカスはサミュウさんだけが作ってるから商品数は少ない。
しかもそのほとんどを冒険者が買っているのが現状だしな。
「それで王家から城に来るようにって声がかかってるんよ。そんで商会開く時にマルコイさんの名前も入れてたからマルコイさんも来てって。私が行くつもりなんやけど、一応言うとかないとって思ったんよ。」
「ん?俺別に行ってもいいぞ?」
「え?いいの?来てくれるならすごく心強いけど、マルコイさん嫌がるだろうと思ってたから。」
「別に構わないさ。パーティメンバーが困ってるなら助けるのがリーダーだろう?それに実は俺はな‥‥男爵家の三男だったりするんだぞ。」
「ええーーー!マルコイさんって貴族やったん?」
そうなのだ。
特に言う必要もなかったから、俺が男爵家の三男だって事はアキーエとミミウしか知らなかったりする。
隠す必要もないけど、貴族って畏まられるのも嫌だったし。
「家を出たから、多分元男爵家って事になってると思うけどね。だから王族の前に行ったとしても、そんなに粗相はしないと思うぞ。」
「なんだそうだったんだ。びっくりしたけど、それやと助かるわ。正直うちも王族の前に行くのは気が引けたから。」
多分商会への話だから、宰相さんとかがでてくると思うけど、もしかしたら王様の前に呼ばれるかも知れないからな。
しかし王族の前とはいえ、今の俺の立場は冒険者だ。
「今回の訪問は商会の会長と立ち上げを一緒に行った冒険者の護衛としてって感じかな。」
「いや、何言うとるの?ホット商会の会長はマルコイさんやで。」
「へ?」
人が聞いたら俺が男爵家ってことより、そっちの方がびっくりしないか?
ん〜‥
久しぶりにそんな公の場にでるからなにか緊張してきたな。
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