第111話
短剣使いは蹲り動けなくなったが俺が剣を振り上げたその隙を槍使いは見逃さず、高速で突きを放ってきた。
しかし俺は少し身体を傾けるだけで、そのまま前に進む。
槍使いは訝しむ表情を見せたが、そのまま槍を止めるとこなく俺の身体に放つ。
槍が俺の身体に当たったと思われた瞬間甲高いガラスが割れるような音がする。
そして槍は何かにぶつかったようにその場で勢いをなくす。
槍が当たったと確信していた槍使いの動きが止まり一瞬隙ができる。
俺はその隙を見逃さず剣を横なぎに振るう。
俺の動きが止まらなかった事に気づきはしたものの、その隙は大きく槍使いはすぐに防御に転じたが俺の剣は大きく槍使いの男を斬りつけた。
槍使いの男は腹部に戦闘を続けれないほどの斬り傷を受け、倒れ込んだ。
槍使いと短剣使いはすぐに場外に降ろされ、治療を受ける事になった。
その間に残る俺とカリーンさんが対峙するために場内の中央に歩み寄る。
「マルコイ君はとても強かったんだね。ドラゴン退治の時には確かに他のCランク冒険者に比べて強さを感じたし、何かとっておきみたいな物をもってるなと思っていたけど、そこまでの強さは持ってなかったはずだったと思うけど?」
俺は先に中央に辿り着いているカリーンさんの問いかけに答える。
「そうですね。確かにあの時は本気を出してませんでしたけど、それでもあの頃は今よりも弱かったですね。『獅子の立髪』の皆さんやドラゴン討伐で一緒だった他のパーティの皆さんにも色々教えて貰いました。それで闘技会まで必死で訓練して自分のスキルを育てました。」
「なるほど。マルコイ君のスキルは成長スピードがものすごく早いみたいだね。ドラゴン討伐の時点ではまだ弱かった自分のスキルを徹底的に鍛え直したわけだ。」
中央に対峙してお互いに構える。
「そうですね。皆さんのお陰で多少なりとも世間一般的に強いと思われる部類に入れたと思います。」
「ふふ。私達のおかげか‥ありがとう。しかし全てマルコイ君の努力の賜物だろう。尊敬するよ。しかしそれとこれとは話が別だ。私の全力、受け止めてもらうよ。」
カリーンさんは歩くようにゆったりとこちらに近づいてくる。
そしてあと数歩で間合いに入るといったところで急激にスピードアップして斧を振り下ろしてきた。
スキル【剛腕】の全力は石畳の床を割るほどの力を持っていた。
それを横に躱し剣を振ろうとするが、カリーンさんは地面に当たり斧が跳ねた反動を利用して力で無理矢理斧の軌道を変えて攻撃してきた。
そんな事をすれば腕の腱が切れそうなものだが、構わずカリーンさんは動かした。
剣で慌てて防御するが、そのまま吹っ飛ばされる。
もちろん【堅牢】を使用していたが、カリーンさんの攻撃力は防げないようだ。
過信せず防御していて助かった。
身体ごと飛ばされたが、すぐに体勢を整えてカリーンさんと対峙する。
やはり強い。
さっきのBランクよりもさらに強い。
カリーンさんは獅子を思わせるような獰猛な笑顔を浮かべたままこちらに近づいてくる。
戦闘民族のような人だな‥
あの膂力で通常の軌道とは違ったところから斧がくるって事か。
それならあの斧を弾き返せばいいわけだな。
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