第61話

山の中腹を見上げると、そこに大きな横穴があるようだった。

バラックスの話では、その横穴がドラゴンの住処らしい。


「全員警戒して進むぞ。シクー探索を頼む。ドラゴンの場所を特定したら報告をしてくれ。もし寝てたりするといいんだがな。」


バラックスが仲間に告げると、猫族のようなしなやかな身体をした女性が横穴に向かって走り出した。

走っているが、音がしない。

すごいな、あれもスキルの効果なのかな?それとも修練して得た技術なのか。


しばらくするとシクーが戻ってくる。


「今はしっかりと起きてて食事中みたいだね。横穴から入ってしばらく進んだ大きめの場所にいたわ。上が吹き抜けになってるから、そこから出入りしてるみたい。」


「そこで戦えるか?」


「いや、この人数入るとなると厳しそうだったわ。あそこから誘き出してここら辺で戦う方が利口ね。」


「そうか、わかった。」


バラックスはしばらく仲間と話をした後、他のパーティのもとにやってきた。


「ドラゴンは確認できたが、今いる場所は戦闘に不向きのようだ。なのでこの辺りに誘き寄せて討伐したいと思っている。」


他の高ランクパーティ達も頷いている。サポートにあたるC.Dランクのパーティも問題ないようだ。


「それじゃ戦闘前に作戦を立てよう。ドラゴンが厄介なところは飛べる事とブレスだ。ブレスに関してはうちの盾士と『雷鳴の音』の盾士で防ぐからいいとして、飛ばないように最初の段階で翼を攻撃する必要がある。誘い出してこの場所に降りてきたと同時に魔法や遠距離攻撃が使えるものは翼に一斉攻撃を仕掛けてくれ。」


「「了解した。」」


俺は気になった事をバラックスに尋ねる。


「ドラゴンはどうやって誘い出すんだ?」


バラックスはニヤリと笑い


「お食事中の顔に魔法をぶっ放されたら誰でも怒るだろ?」


なるほど。

ミミウなら一生恨むレベルだな‥

ミミウを見ると、なんて恐ろしい事を!みたいな顔になってるし‥


シクーとAランクパーティの魔法が使える人が一緒に横穴に入って行った。


「すぐに上から出てくるぞ。盾士は攻撃に備えてくれ。盾士が受け止めたら、一斉攻撃頼むぞ。」


魔法や遠距離攻撃力ができる者達が頷く。


しばらく経つと横穴で爆発音と、巨大なモンスターの咆哮が聞こえた。

まるで空気が震えるようだ。

この咆哮を聞くと、とても人が手を出してはいけない気がする‥


「くるぞっ!」


横穴からシクー達が戻ってくる。

すると上から物凄い吹き下ろしの風が打ちつけてくる。

上を見るとドラゴンが大きな鉤爪を向けて此方に向かってきていた。

それを盾士達が受け止める。


「いまだっ!」


バラックスの合図に色とりどりの魔法や弓矢がドラゴンの翼に収束する。


流石高ランク冒険者の攻撃だな。

ドラゴンの翼が片方だが、完全に折れている。


「ここからは地上戦となる!サポートパーティは後方に下がって傷薬や魔法の準備をしてくれ!攻撃パーティ行くぞっ!」


こうしてドラゴンとの戦いが始まった。

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