第52話

こんなとこで客引き?

そう思っていると男が話を続けてくる。


「うちのお店は鍛治ギルドの奥にあってなかなかお客が来ないんですよ。よかったら寄っていただけませんか?お安くしますよ。」


今日は特に予定もなかったので、お腹が空いたとぐずるミミウにパンを渡して男の店に向かう。


「確かにこんな所にあるなら客は来ないな〜。」


男の店は鍛治ギルドから奥に進み首都の外壁付近にあった。

店自体は小綺麗にされており、客が見やすいよう展示品を並べてあった。

しかし剣、槍がほとんどで防具類は見当たらない。


「私の名前はサミュウと申します。スキル【鍛造】を持っていて、主に武器類を販売しています。」


「スキル【鍛造】ですか?鋼を叩いて伸ばすやつですよね?」


「はいそうです。なのでうちで取り扱っている商品は剣や槍といった鍛造を用いて作成した商品を取り扱っています。」


サミュウは自身のギルドカードを提示しながら伝えてくる。


あれ?模倣しなかったな。【鍛造】を聞くタイミングが悪かったのか?

そう思いながら、サミュウのギルドカードを確認する。


サミュウ

鍛治ランクD

スキル【鍛造Lv.5】


確かにスキル【鍛造】持ちだ。


「剣の装飾とかはどうしてるんです?」


「はい。私が得意とするのは【鍛造】までですからね。他は装飾師や装具師などに頼みます。」


やはり模倣する気配はない。もしかしてスキル【鍛造】に関しては見て確認しないと模倣できないスキルなのか?


「この武器類はこちらのお店で作ってるんですか?」


「はい。店の奥に炉があるので、そこで作っていますよ。」


「すいません。厚かましいお願いとは思うんですが、その炉を見せてもらう事ってできますか?」


「今日は店を閉めてから少し作業をしようと思っていて、ちょうど他のものに炉に火を入れるよう言っていたのでお見せできますよ。」


自分でも無茶なお願いだと思っていたのに、結構あっさりと承諾してくれたな。


「私のスキル【鍛造】は他にはあまり見ないスキルでして。お店に来られたお客様でたまに作業を見せてくれないか?って人もいらっしゃるんですよ。」


なるほど。

スキル【鍛造】はなかなかレアなスキルのようだ。


サミュウに連れられて、店の奥の作業場に移動する。

作業場には炉が設置してあり、すぐにでも鍛治ができるよう準備がしてあった。


「では作業中のショートソードの鍛造をしますが、しばらく時間が掛かりますが見ていかれます?」


サミュウに聞かれてパーティの皆んなを見る。皆んな頷いてくれたのでそのまま作業を見ることにした‥


作業場に鋼を叩く音が響き、火花が散る様を見つめていた。

ミミウがウトウトする以外は特別な事はなく作業は終了した。


「これを繰り返し様々な温度で叩く事で不純物を取り除き剣を作り上げます。」


汗を大量に滴らせてサミュウがこちらにやってくる。これだけ大変な作業を続けるから、鍛造は鋳造に比べて、やはり時間もかかるし値段も高くなるはずだ。


「ありがとうございます。素晴らしい物を見せてもらいました。」


「それはよかったです。私も自分のスキル【鍛造】に誇りを持ってますから。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る