第21話 予選大会の結果
予選大会を優勝することが出来た。これで、俺たちのチームは全国大会に出場するための切符を手にした。
「よく頑張ったわね、皆! よかった、本当に!」
田中先生が涙を流しながら喜び、大会で優勝したチームの皆を褒めていた。とても嬉しかったようだ。
試合中、両手を目の前でギュッと握って勝利を祈ってくれていたから。
「おめでとう!」
「すごかった!」
「つよかったな!」
「来年は、わたしも!」
試合を応援しに来てくれた子たちもチームの皆を取り囲み、一緒に喜んでくれた。
勝てて良かったと、俺はホッとした。今まで練習してきた皆の頑張りが報われて、本当に良かった。
そして、俺たちの次の目標が決まる。全国大会に出場して優勝すること。
夏休みに入り、俺たちは小学校の体育館に集まってドッジボールを練習していた。チームメンバーの保護者たちから、差し入れも貰った。
全国大会に出場するということで、万全を期すため大人たちに色々とサポートしてもらっている。初出場だが、初優勝を期待されていた。
大会に出場するメンバーのやる気も高まって、練習が捗る。
予選大会で得た経験を活かして、俺は新たなトレーニング方法を考える。
予選で勝てたのは、運が良かった。最初の試合で優位に立ち、練習してきたことが全部出せた。そのまま勢いに乗って、トントン拍子で勝ち進むことが出来た。途中で調子を崩してしまったら、あっさり負けていたかもしれない。
やはり、ボールを投げる勢いは他のチームに比べて弱かった。それから、リーダーである俺が集中して狙われることが多かった。ターゲットを他の子に変えられたら、苦しかったかも。
ということで、試合で経験したことを活かして戦術を練り直す。試合でも通用した方法を、さらに磨いていく。
20名のメンバーに選ばれなかった子たちも、夏休み練習に参加してくれていた。今回の大会には出場することが出来なかったけれど、来年は絶対に出てやるぞという熱い気持ちを持って練習に参加してくれているようだ。
それから大会で試合しているのを見て、参加したいと申し出る子が増えた。現在、合計35名の子どもたちが練習に参加している。
15名は、来年の大会出場を目標にして練習を頑張っていた。そして残りの20名は、大会優勝を目指して本気で頑張っている。
「もっと、避ける時は体を素早く動かして」
「こう?」
「そう! それから、足もこうやって」
「わかった」
ボールの避け方を教える。ディフェンス能力を高めていく。
「ボールを投げる時は、高い位置にボールを構えて。上から下にね」
「うん」
「そうそう。それで、こっちの足に体重を乗っけて。体全体で投げる!」
「ウラッ!」
「よし!」
ボールの投げ方を教える。俺たちの弱点でもある、オフェンス能力を鍛えたい。
「フェイントを取り入れよう」
「ふぇいんと?」
「こっちに投げるぞ、って思わせてから別の子に投げるんだ」
「なるほど」
「合図を考えるから、覚えてね」
「わかった」
新たな戦術について教える。少し難しいけれど、覚えたら試合で必ず役立つはず。
メンバーを一人ひとりチェックしていって、俺はアドバイスしていく。それから、実践さながらの練習試合を行った。
「やった! 当たった!」
「くっそー!」
「バック! あぶない!」
「よけて、すぐにもどって!」
「あわてないで、おちついて」
「うわっ!」
「ボール、当てた!」
大会を経験したことで、子どもたちも急成長していた。練習試合でも声を出して、本気で試合する。チームの皆は実感できるぐらい、短期間でレベルアップしていた。
夏休みの練習で、予選大会の時と比べて3倍ぐらい実力が上がっているような気がする。
毎日、体育館に集まれる子たちは集まって。練習する時間は1時間ほど。なるべく時間きっかりで、練習を止める。あまり長時間の練習はしないで、密度の濃い練習を心がけていた。全国大会まで、もうすぐ。時間も有限だから。
そして、8月最後の週。全国大会の本番が行われる日がやって来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます