第19話 予選大会

 ドッジボール大会の予選が行われる日になった。会場となる体育館に、現地集合。親御さんに送ってもらって、誰も遅刻せずに20名が集まった。


「それじゃあ、皆。ここに集まって! 点呼を取るからね」

「「「はい!」」」


 参加の申し込みをお願いした田中先生には、大会に出場するためにチームの監督もお願いしていた。


 監督と言っても、ドッジボールの指導はしない。会場での点呼や、チームの責任者という役目を請け負ってくれていた。それから、細々とした雑務なども。


「20名、ちゃんと居るわね。それじゃあ皆、今日の大会頑張って!」

「「「はい!」」」


 練習に参加していた残りの9名は、残念ながら選ばれなかった。申し訳ないけど、ちゃんと実力を見極めて20名だけ選んだ。無慈悲だけど残りの9名にはその結果を伝えて、大会の参加を諦めてもらうことになった。


 一緒にドッジボールの練習を頑張ってきたのに、本当に申し訳ない。


「がんばってね、みんな! さとるくん!!」

「うん! がんばる!」

「みてて!」

「ありがとう! 頑張ってくるよ!」


 それなのに、選ばれなかった子たちは優勝してくれと試合を応援しに来てくれた。本気で、俺たちの優勝を願ってくれている。


 彼らのためにも、今日の大会は絶対に勝たないといけない。


「おうえんにきたよ!」

「がんばってね!」

「みんながかつところ、見せてね!」


 それから、練習には参加しなかったけれど応援しに来てくれたクラスメートたちも居た。ありがたい。試合に出る皆のやる気が、一気に高まった。


「うん! やるよ!!」

「がんばる!」




 予選大会に出場する他のチームも、会場にどんどん集まってきていた。


 ほとんどが、5年生か6年生の高学年選手ばかりである。


 普通は、ちゃんと体が成長している高学年の方がパワーなどで有利。だから、他のチームは5年生か6年生が選ばれているのだろう。投げる力が強そうだ。


 2年生だけでチームを組んでいるのは、俺たちのところだけらしい。それどころか、2年生がリーダーを務めるチームも大会史上初だという。


 しかも俺たちは、今大会が初参加である。嫌でも注目を浴びる。


 周りの選手たちと比べて、明らかに体が小さい。各チームが揃ってくると、とても目立っていた。


 興味津々で観察してくるチームや、アレなら勝てると侮るような視線を向けてくるチームなど。早く、試合で俺たちの実力を示したい。


 開会式が行われて、対戦表が発表された。トーナメント形式で、3勝したら決勝に進める。そこで勝てば、全国大会に出場できる切符を手に入れることが出来る。


 今日は最大4試合する。試合であまり消耗せずに、体力を持たせないといけない。


 9時から試合が開始されて、俺たちは10時過ぎに試合を行うことになった。最初じゃなくてよかった。しばらく、他のチームが試合する様子を見学できる。


 ということで、自分たちの試合が始まるまで、観客席で他のチームが試合している様子を観察した。


「なるほど」


 何チームか見て、あれぐらいならおそらく勝てる、と思った。他のチームが試合をしている様子を見ていると、俺は自信がついた。


 しかし、他の子たちはガチガチに緊張してしまったようだ。


 自分たちの試合が始まるのを待っている間に、だんだん緊張してきたのかな。


 おそらく、ほとんどの子たちが大会に参加するのも初めての経験なんだろう。


 大会の経験が少ないから、場の雰囲気に呑まれている。


 このまま戦ったら、実力を全く出せずに負けてしまいそうだ。チームの雰囲気を、どうにかして変えないと。


「大丈夫だよ、皆! 絶対に勝てる!!」

「かてるかな?」

「うん! きっと、勝てるさ」

「悟くんが言うのなら、本当だ!」

「みんなでがんばって、かちたい!」


 俺の一言で、皆のやる気が高まった。今日まで頑張って練習してきた分の自信が、ちゃんとあるようで安心した。


「次に試合するチーム。そろそろ準備してください」

「はいッ!」


 予定の時間が来たので、呼ばれた。観客席から降りる。そして、ようやく初めての公式試合だ。


 俺たちの試合が始まる。さぁ、頑張ろう!

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