第32話 相談相手/加奈子
中学生になった私は遂に携帯電話を買ってもらえた。
これでやっとりょう君にいつでも直接、連絡ができると思うと嬉しくてたまらなかった。
そして直ぐに私はりょう君に電話をかけ、思い切って『デート』のお誘いをしたけど、りょう君は快く受けてくれてとてもホッとした。
デート当日、駅前で待ち合わせをした私達は『エキサイト公園』まで歩いて向かっていたけど、途中で今年の2月で閉園になった思い出の場所『エキサイトランド跡地』の前で立ち止まり思い出に更けっていた。
その後、公園内に入りお昼ということで桜の木の下にあるベンチに二人並んで腰かけると私は朝早くからお母さんに教わりながら作ったお弁当を出すとりょう君は「とても美味しそう!!」と言ってくれて凄く嬉しかった。
お弁当を美味しそうに食べているりょう君を見ているだけで私は幸せな気持ちになり、お腹も一杯になった感覚になってしまう。
ああ、凄く幸せだなぁ……この時間がずっと続いて欲しいなぁ……
お弁当を食べながら二人してたわいもない話をしていると突然、りょう君に誰かが声をかけてきた。
そしてりょう君がその人達の姿を見てとても驚いていた。なんとその人達は広美さんのご両親だったのだ。
「お久しぶりです……」
「ほんと、久しぶりだねぇ。志保姉ちゃん、いや志保さんや三郎さんにはたまに会うけど、この1年くらい亮二君の顔を見ていなかったからとても気になっていたんだよ。でもまぁ、広美も東京に行って家にいないし、亮二君がうちに来る理由もないから仕方ないけどねぇ……」
「ハ、ハハハ……そうですね……」
広美さんのお父さんって、たしかうちのお母さんの高校時代の同級生で……そしてお母さんや久子おばさんの初恋の人なのよね?
でも、うーん……
私のお父さんの方がずっとイケメンだと思うんだけどなぁ……
お母さん達はこの人のどこを好きになったんだろう?
「亮二君と一緒にいるこの可愛らしいお嬢さんはどなたなの? おばさんにも紹介してほしいんだけど」
「えっ? ああ、この子は三田加奈子ちゃんといいまして……」
「 「えっ!? 三田加奈子!?」 」
二人が突然、大きな声で私の名前を呼んだので驚いてしまった。
「そういえば、隆おじさん達は三田さん夫婦をご存じなんですよね? そうです。その三田さんの娘さんです」
「そ、そうだったのか……言われてみれば昔のマーコに似ているなぁ……」
「そうね。真由子ちゃんに似てとっても美人さんだわぁ。私達、加奈子ちゃんの赤ん坊の頃しか知らないからとても驚いたわ。まさか、こんなところで会えるなんて……何だかおばさん、感動しちゃった……」
「は、初めまして……? 三田加奈子といいます」
私が少し照れくさい感じで挨拶をすると広美さんのお母さんが優しい眼差しで私を見つめながら「真由子ちゃん、いえ、お母さんは元気にされているのかな?」と尋ねてきたので私は、
「はい、元気過ぎるくらい元気です」と答えた。
すると広美さんのお父さんが「ハハハ、加奈子ちゃんってマーコと同じでノリが良さそうだねぇ。うちの広美とも同じような雰囲気を持っていてとても気に入ったよ。これからおじさん、加奈子ちゃんのファンになっちゃおうかなぁ?」
「えっ、フ、ファン!?」
「もう、隆君ったら、若い子をからかうもんじゃないわよ。それに亮二君に悪いじゃない。フフフ……」
「えっ!? お、俺に悪いって……」
りょう君も私も広美さんのご両親に翻弄されている感じになっていた。でも、さすがは昔から二人のことを知っているりょう君だ。直ぐに反撃? に出た。
「そ、そんなことよりもおじさん達はいつも仲良しですねぇ? さっきからずっと手を繋いでいるし。うちの親とは大違いですよ。まぁ、あまりうちの親が手を繋いでいるところは見たくないですけど……」
私はりょう君の言葉に二人は凄く照れるだろうと思っていたけど、広美さんのお父さんの返事は意外な言葉だった。
「ハハハ、仲良しに決まっているじゃないか。俺は妻をめちゃくちゃ愛しているからね。だから手を繋ぐのも当たり前だし……って、あれ? 二人は手を繋がないのかい?」
「 「えっ!?」 」
私まで大きな声を出してしまった。りょう君は意外な返事をされて少し焦っているように見える。向こうの方が上手だった。
「い、いや……カナちゃんと俺はそういう関係じゃないですし……それに俺は大学生でカナちゃんはまだ中学生になったばかりですから……隆おじさん、急にビックリするような事を言わないでくださいよぉ?」
私はそういう関係になりたいし、手も繋ぎたいよ。
そう言えばりょう君と手を繋いだのって幼稚園の頃と小5の頃の二回だけだもんなぁ……
「ええ、そうかなぁ? 俺から見ると二人は付き合っているようにしか見えないけどなぁ……」
「えっ!? だ、だから……」
「ゴメンね、亮二君。隆君と私は17歳差の歳の差婚だから、どこか他の人達と違う感覚があるっていうか、そういうところが凄く麻痺しちゃっているのよねぇ……だから隆君の言う事は悪気は無いからあまり気にしないでね」
「は、はぁ……」
麻痺し過ぎでしょ? って言いたいところだけど広美さんのご両親ってとっても素敵だなぁ……私も将来、こんな夫婦になりたいなぁ……二人が今も凄く愛し合っているのがまだ子供の私でも凄く分かる。
それにこの二人の前では私とりょう君は普通のカップルに見えるのも凄く嬉しい。
今度、広美さんのお父さんに幼稚園の頃からの初恋を成就する秘訣を教わりたくなってきたわ。
17歳差もあるのにこんなに幸せなんだから7歳差なんて全然、普通だし……
「あ、そうだ亮二君。少しおじさんと二人で話をしないかい? あまり時間は取らせないからさ」
「え? まぁ少しくらいなら構わないですけど……」
りょう君と広美さんのお父さんは10メートルくらい離れた所にあるベンチに向かって行った。そして私の前には広美さんのお母さんがニコニコしながら私を見つめている。
しかし広美さんのお母さんって50歳過ぎているんだよね? 見た感じ全然50過ぎに見えないなぁ……肌も綺麗だし、シワも少ないし、40代でも全然通るくらいに綺麗な人だなぁ……
さすが女優を目指している娘さんがいるだけの事があるわ。
「あ、あのぉ、良かったら隣座ってください」
「あら、ありがとう。ちょうどおばさん歩き疲れてたから丁度良かったわ。でもゴメンね、加奈子ちゃん。せっかくのデートなのに邪魔しちゃって……」
「い、いえ、そんなことは……それより私も広美さんのお母さんにお聞きしたい事があるんですが……」
「え、何かしら? 何でも聞いてちょうだい」
「あ、あのですね……ご主人と17歳差あるって言われてましたけど、御主人から告白された時、どんな気持ちでしたか? それと歳の差に対して不安は無かったですか?」
私が質問すると広美さんのお母さんは少し考えた表情をした後、直ぐに笑顔に戻ると、
「そうねぇ……今の加奈子ちゃんにとって凄く大事な質問かもしれないわねぇ。これはおばさん、ちゃんとお答えしないといけないわね」
「えっ? い、いや、それはその……」
「フフフ、今はおばさんしかいないんだから隠さなくてもいいのよ。加奈子ちゃんは亮二君の事が本気で好きなんでしょ?」
「・・・・・・」
広美さんのお母さんの話し方って何だかとても聞き心地が良いだよなぁ。それに何でも正直に話したくなってしまう雰囲気も持っているし……だから……
「は、はい……私はりょう君の事が大好きです。それに5年生の時に告白もしました。だけどりょう君は自分は大学生で私はまだ中学生だから、今の私を恋愛対象とは考えていないと思います。ただ、あの時……エキサイトランドで再会したあの時……」
私は続けて、あの時交わしたりょう君との約束のことも広美さんのお母さんに話すのだった。
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