私ね、君の記憶が無いの。
にも
第1話 この世界は思っているより説明不能
「あ、えっとね、私、君の記憶が無いの。」
ーー冗談で言っている雰囲気では無い。
「へえ! そんなデートしたんだ! なんか青春だね! そっか……。」
ーーおいおい何言ってんだよお前。俺は全部、会話まで覚えてるってのに。
「やっぱり君と話すと楽しい気がする! さっすが、T大は違うねー!」
ーーまぁ、そりゃそうだろうよ。
「その後出会ったのはクソみてぇな能無しばっかだったわー」
ーーは? え、今なんて?
「やっぱり君くらいのレベルの男の人じゃ無いとね! 頭悪いやつゴメンなんだよな。」
ーーあれ……こんな奴だったかな……記憶力には自信があるんだけど……。
※
「お前、そんな奴だった?」
その言葉がクルクルと回り続ける。
そんな奴、か。
ベッドの中でコロコロと回り続ける。
そんな奴、かもね。
覆水盆に返らずとは言うけれど、一体この責任の所在はどこにあると言うのだろう。
身体が熱くなる。
鼻の奥がツンと痛む。
左側の目から涙が溢れる。
知らないよ、私だって。
なぜ君の記憶「だけ」が抜け落ちてしまったのかなんて。
気づいたら、無常なほど時が経っていた。
ーーは、ははは。ミスチルかよ、なんてね。
閉ざされたドアの向こうには、素晴らしい明日は待っていない。
明日はもう見えてる。
夢はなくても希望はなくても、残された遥かな道を行くだけ。
「ああごめん、もう寝るから、おやすみ」
そう告げてまたベッドに戻る。
明日クマ無く会社に行く自信は、無い。
これは終わりのスタートライン。
オンユアマーク。
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